その15.作品を台なしにしないキャラクター
前回は、キャラクターとストーリー構成の関連性およびキャラクターの作り込みの概要を説明しました。今回からはそれを踏まえた上で、『キャラクターをどう作っていくか』について、全百科の内容を交えながら触れたいと思います。
それに際し、まず触れておくべき命題があります。
それは『作品にとって良いキャラとはなにか?』ということ。
といっても、多くの人は『良いキャラクターとは魅力的なキャラクターだろう』と答えると思います。事実それは間違いないでしょう。
だとしても、ここでは『魅力的なキャラとは具体的にこういうものだ!』という方向で創作論を語りません。そのあたり主観や時代によって変わってきますし。またそこは感性の領分であり理論的にとらえるのは難しいところなわけで。
また作家の中にはその手の作法を確立している人もいますが、それはその人の感性に頼るところも大きく。他人が真似したところで同じようなクオリティのキャラは作れないだろうと思われます。
ではどういう方向で語るかというと、流れとして
〇まず最低限『作品をだいなしにしないキャラクター』を把握し
〇そのうえで、統計や経験則的に『今までの作品の魅力的なキャラには大体こういう感じのキャラが多い』という類型を知り
〇『その類型をもとにキャラクターのたたき台を作る方法』を得る
そんな感じで語れればいいと思っています。
そしてそのあとは作家自身が作品を書き続けながら研究し、自分に合った魅力的なキャラの制作方法を確立してもらえばいいかなと。
今回はその第一段階。とりあえず作ったキャラクターが物語をだいなしにしないためにどう考えればいいか、という話になります。
では、物語をだいなしにしないキャラとはどんなものか?
ここでは『物語の邪魔をしないキャラクター』として語ります。
まず全百科では、一通り説明のあったあとに登場人物から「一口にキャラクターを作ると言っても、まんがの種類によって使えるキャラと使えないキャラがいるのではないか」という疑問が提起されます。
例えばシリアスな漫画を描いているのに、そこにギャグ漫画のキャラは入れられない。ファンタジー漫画を描いているのに、そこにミステリー漫画の探偵は出せないだろうと。
それに対して全百科中の講師は「まんがの種類はさほど問題ではない。作っているストーリーにそのキャラクターが合っているか合っていないかが重要である」と説明。
『シリアスだから』『ギャグだから』『ファンタジーだから』『ミステリーだから』このキャラクターが使えるまたは使えないということではなく。話(ストーリーや世界観)に合っているかでキャラの作り込みをおこなうべきだとしています。
つまりキャラが話に合ってさえいれば、シリアス漫画にギャグ漫画の登場人物のようなキャラを出してもかまわないし、逆もまた然りと。(ただ、そういうミスマッチな表現はハイレベルな技術が必要となるので、描き慣れない限りは無難な選択をしたほうがいい、とも忠告しています)
では、その『話に合ったキャラクター』というのはどうすれば作れるのでしょうか?
そこで注目するのは物語中で起きる『事件』。
物語は基本、事件とキャラクターとの関係・ぶつかり合いによって話が進むわけで、キャラクターの特徴や性格がその進行に大きく影響してきます。
例えばSFで、宇宙人が血液型A型の人間だけ殺していくという事件が発生する物語の場合。その登場人物の特徴で重要になるのは『血液型が何型か』という点でしょう。
そしてそれ以外の要素、例えばハンサムであるとかチビであるとかそういう要素は物語を進めていくうえでどうでもいいはず。むしろ強調しすぎれば邪魔にさえなってしまうでしょう。
つまり、登場人物(特に主人公)が物語上の事件とどうぶつかっていくかを主軸にキャラクターを練っていくのが重要で、それ以外の要素は物語の邪魔にならない範囲で盛り込んでいくことが大切になってくるわけです。
また周りの登場人物は、上記を念頭に置いたうえで主人公とどう接するかあるいはどう衝突するかにも着目して練り上げると、その魅力を引き出すのに十分貢献するでしょう。
このように自分の作りたい物語から逆算して作りこんでいけば、物語を邪魔するキャラになるのを避けられます。また後日、具体的な話を細かく作りこむのも楽になるでしょう。
では物語のあらすじの作りこみが十分でない場合はどうでしょうか。その場合手順を逆にして、『事件を起こしやすいキャラ』をとりあえず頭の中に構想としてある物語の場面に置いてみる、という手法を使うと良いです。
事件を起こしやすいキャラとは、例えば乱暴で喧嘩早いキャラは、どんな場面に置いても事件を起こしやすいでしょう。
またアンラッキーなキャラは事件や事故に巻き込まれやすく。
ハンサムや美人はそれだけで周りが放っておかず、いざこざが絶えないと思います。
事件を起こしやすいキャラの特徴がぱっと思いつかない場合は、先日あげた感情の種類『喜怒哀楽笑憂思恐驚』の一つをピックアップして誇張し、総当たりで試してみて話が膨らむか考えてみると作りやすいかもしれません。
例えば、どんなことでも喜ぶ人(または怒る人、悲しむ人、楽観的に考える人、笑っちゃう人など)をその場面に置いたらどんな話が展開するだろう、という風に考えてみると。
こうやってもめごとを起こしやすそうな主人公を置き、現状考えている物語上の事件を次々とぶつけていってその対応を想像しながら話を作りこむとともにキャラも調整していく、という手法でも物語にそったキャラクターを作りこむことができます。
次回はキャラメイク二段階目、『好まれやすいキャラクターの類型』を説明します。
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