その9.『起』から話を作っていく場合は『テーマに具体性を与える』

 前回は『「結(オチ)」でアイデアをどう表現するかを考え、それを生かすために『転』を練り、その説明と展開のために『起』『承』を盛り付けていく』という流れを説明しました。


 ただ、執筆内容や状況よっては『結』ではなく『起』からアイデアを盛り込んでいきたいときもあるでしょう。そういう場合どう作っていくか。今回はその方法を解説した私論となります。



 さて、例えば『ジャンル、テーマ、方向性などとりあえず書きたいもののイメージはなんとなくある。けど、最終的にどういう物語が展開してどう結末を迎えるかは決まっていない』という状況からどう作っていけばいいか。


 結論として、ざっくり流れを書きますと


1、まず『テーマに具体性を与える』

2、それを元に『起・承・転』の部分にアイデアを盛り込んでいく

3、適度に盛りつけたら、その内容を元に『結』を構築


 というのが今回説明される手順となります。



 最初の『テーマに具体性を与える』とはどういうことかといいますと。例えばテーマが『友情』と一言ざっくりとしたものしかない場合『友情といってもなにを書けばいいんじゃい』と行き詰まってしまうわけで。そこで、題材にしやすいようにもう少し内容を盛り込み、具体化していきます。


 その際、読者に問いかけとして提示できるように盛り込むと話を作りやすくなります。漠然と『友情』をどうするか考えるより『ボッチからクラス全員と仲良くなるにはどうすればいいか?』とか『男女間で友情は成り立つか?』とか『永遠の友情はあるか?』とか、読者へ問いかけるような形にすると、テーマから話を導きやすいということです。


 また問いかけ形式のテーマは、作品のなにを期待すればいいか読者が読んでいるうちに察しやすく。さらにその問いかけの答え見たさに終わりまで読み進んでくれる可能性が高まるという利点もあります。


 もしどう問いかければいいか思いつかない場合、『○○とはなにか?』という問いを自分の中で突き詰めるところからはじめるといいかもしれません。例えば先の例で言うと○○には『友情』が入ります。


 その問いに対して自分の中に確固とした答えがあるならしめたもの。それがそのまま作品のテーマとなりえ、問いから答えへの筋道が描くべき内容となりえます。


 答えがあるにはあるが、やはりまだ漠然としていて問いかけに使えなさそうである場合。とりあえず思いつく答えを具体的に文章に書き詰めてみるといいでしょう。そこからよりふさわしいテーマが出てくる可能性もあります。


 それでもやはりピンとこないのなら、問いや答えを『置換』『誇張』『逆転』『連想』で展開して問いかけを新たに作っていくといいでしょう。先ほどの話で言えば、『連想』で友情に関連した単語や文章を列挙。そこから『置換』や『逆転』で展開し『男女間の友情』というキーワードを派生させたり、『誇張』で展開し『永遠の友情』というキーワードを導き出したりするなど。


 またこの問いかけは、YesまたはNoで答えられる形にするとより扱いやすくなります。またそのとき、結末はYesと答えたような内容にするのが順当。ですが、敢えてNoを突きつけるような結末にするのもそれはそれでアリです(読者を満足させるには高い技量が必要になりますが……)。


 ちなみに拙作の場合『劣等スキル持ちで~』では『ホントにありふれた職業で最恐魔王を倒す』というコアのアイデアを『農民・商人・鍛冶屋・鑑定士のポンコツパーティーで最恐魔王を倒せるか?』と変形させており、これをそのまま物語のフレーム、およびカクヨムでのキャッチフレーズに使っていたり。


 さらに言えば、この問いかけがより魅力的であればあるほど作品の成功率が高まります。その問いかけがいかに読者の関心につながり、興味を引き、面白く展開できるものであるか。その質によっては、そこで作品の成否がおおよそ決まってしまうこともありえます。


 ただ、そこをあまりにも重視しすぎてこの段階で足踏みするのは、『宝くじに当たってから事業を展開しよう』としているとの大差ありません。ここで当りを引けなくても、創作技量や運によって挽回できる可能性は十分あります。時間を決めた上で適度に切り上げるほうがいいでしょう。


 またこういう『問いかけテーマ』は別の作品を創作している間も含めて常に考えスタックしていき、『次になにを作ろう』と考える段階になったときに、そこからよりよい問いかけを引っ張ってこれるようにするのがベターなやりかただと思います。



 上記手順で十分具体化できたと思えたら、次はそれを元に『起・承・転』を考えていきます。


 といっても、テーマを具体化した時点で結末のアイデアがすでに頭に浮かんでる場合もままあるわけで。もし『この作品にはこの結末以外ありえない』と言い切れるようなものをすでに思いついたのなら、そのまま前回の手法で『結』から大筋を作っていくのもアリ。


 そうでない場合は基本的に『起・承・転』の順番でアイデアを盛り込んでいき、その後『結』でどう話の決着をつけるか考えていったほうが作りやすいと思います。



 採用するべきアイデアの方向性は、『起・承・転』でそれぞれ、


起 …… 主人公がどうして、あるいはどのようにして事件に巻き込まれたか。

    (あるいは、どのようにして主人公が作品のテーマに関連した出来事に遭遇したか)


承 …… 事件に直面して主人公の周囲にどのような出来事が起こり、どう行動したか。


転 …… 主人公の行動の結果、主人公自身やその周囲にどのような変化が起き、新たな対応を迫られたか。


 以上のようになります。


 ちなみに事件と言っても犯罪性のあるものだけではなく、例えば『宿題を忘れた』『異性に告白された』『部活に入ることになった』などの他愛のない出来事でも問題ありません。



 また『起』>『承』>『転』の順番でアイデアを考えていくにあたって、それぞれの段階で採用できそうなアイデアが思いつかない場合。その部分の内容を平凡なものにしていったんパスして次の段階に考えをすすめ、『転』まで進め終えたら『起』にもどって最初から順に考え直しても構いません。


 実際アイデアなんていくら考えても出ないときには出ないわけでw なので特定の部分で作業を止めてしまわずに、タイムシェアリングの手法で各段階まんべんなく時間を取ってトータルで長く考えたほうが、よいアイデアが思いつく確率が高まると思います。それに次の手順に進めることが刺激や気分転換になって、あとで考え直したときに良い展開が浮かんでくる場合もあるかなと。



 次回は『起・承・転』にアイデアを展開させる際の具体的な方針や注意点をあげたいと思います。

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