その7.理系的、『起承転結』の考え方

 前回までは『テーマからアイデアを捻出する勉強法(あるいは方法論)』をまとめました。今回からそのアイデアをシナリオやストーリーに落とし込む手法をまとめます。



 ちなみに全百科では、その手法として『起承転結』の考えかたを紹介し、『4コマ漫画』の描きかたを説明しています。


 その『起承転結』ですが、現代においては古典的な考えかたと見る人もいて、また問題のある構成法であるという指摘もあり。それにより『序破急』や『三幕構成(あるいはそれを元にした派生的な手法)』を勧めている人も多いように見えます。(歴史的に言えば序破急のほうがずっと古かったりはしますがw)


 自分も基本、章ごとの話の大枠は『三幕八場』で構成を考えています。


 ただ、『序破急』はともかく『三幕八場』構成は手法の説明が具体的であるが故に、最初に頭にいれておかないといけないことが多く、慣れない人が学習するには負荷があまりにも重く敷居が高いわけで。


 ですので、まずはいったん『起承転結』をものにして構成の作業に慣れてから、必要なら『序破急』なり『三幕八場』なりの理解を進めていくのが、遠回りのようでいて実は近道なのではないかと。


 ただ先ほども少し触れましたが、多くの人が知る『起承転結』には問題(というかある種の誤解)があると思われます。なので『起承転結』学習ルートを辿るなら途中でそれを解消する必要があるかと(これについては数話先で解説させて頂きます)。



 『起承転結』については、多くの解説書がだいたい以下のように説明していると思います。


起:物語の始まり


承:物語の展開


転:物語の流れや状況の変化


結:物語の終幕


 全百科でも起承転結はだいたいこういう定義です。それは内容として正しくはあるのですが、説明としてこれだけだと作品を作っていくには情報が不足しています。


 具体的に言うと、上記の説明は単に『物語はこういう風に構成されている』という設計図のようなものでしかありません。『この設計図で『どう面白く』作品を構成するか』という視点がないのです。


 全百科ではこれを4コマ漫画の構成になずらえて説明。そして4コマ漫画が『4コマ』である理由について「一つの話には始まりと終わりがある。これで2コマ必要となり、始まった話がどうなったかを説明するのにもう1コマ。さらに、話がどう変化したかを説明するのにもう1コマ。これで4コマ必要になる」としています。


 そしてさらに「始まった話をきちんと読者に説明するために起承転結という並びが必須である。例えば起転承結ではダメだ」としています。


 さてこの『起承転結』構成で、アイデアを話に盛り込むにはどうすればいいか。


 これについても全百科では説明しており、4コマ漫画で話の核になるのが『結』、そしてキーポイントは『転』にあるとしています。


 4コマの中で『結』は『オチ』であり最終的に作者が伝えたいことや狙いがここに集約。そして『結』を効果的に表現する為には『転』を工夫する必要があると。そして『起・承』は、『転・結』を読者に理解・納得させるための説明部分となります。



 と、ここまでは4コマ漫画の作法。次はこれを応用して具体的にアイデアをあらすじに落とし込んでみます。ここから先は私論となります。


■ まずアイデアをオチにする方向で考え、そのオチで読者をどういう気分にしたいか決める

 雑に言えば、まず使いたいアイデアをネタにしてラストのオチを決め、そこで読者をどうやって笑わせたり泣かせたりするかを定めるということ。


 以前の連想の説明であげた『美形のゴブリン』を例にしますと。まず「『醜いと思っていたゴブリンが、実は美形でした』というオチで終わりを迎える」と考え。そして、このオチで読者をどういう気分にしたいかを決めるわけです。ちなみにこの場合「読者を驚かす」方向でいったほうが自然に思えます。


 ちなみに気分の類型として『喜怒哀楽』がよく用いられますが、オチの方向性に適用するにはざっくりしすぎてるかなと。なので、それに漢方医学で挙げられている7情(喜怒憂思悲恐驚)から被っていないのを拝借。さらに『笑い』を強調する意味で喜や楽から分離して『喜怒哀楽笑憂思恐驚』。これなら、大体の読者感情を網羅できるかなと。



■ 次にそのオチを活かすために『転』をどうするか考える

 もっとかみ砕いて言えば『オチで読者を目的の気分に誘導するためには『転』をどう作るか考える』ということです。


 ただ、ここ辺りは方法論として確立しているものではなく。思いつけるかどうかは経験則や今までの学習でどれだけ発見しているかにかかっていると思います。


 それでも強いて手段をあげるなら、『ギャップを作る』というのがその1つになるでしょうか。


 例えば笑いネタなどで『笑えるセリフを言う前に一瞬真顔で真剣に前置きをする』というのはよく見かける手法と思います。また泣かせる前にちょっと笑える小ネタをだすというやり方もあるかと。


 『ミスリード』でもギャップを作ることができます。今後の展開について予定とは逆の流れになるかのように臭わせておいて読者の思考を誘導。土壇場で予定通りの流れを見せると不意を突かれ、オチを見て感情を露わにしやすくなる。そんな感じです。


 『美形ゴブリン』ネタを例にすると、『美形ゴブリン』という単語を『結』まで思いつかせないように『転』ではゴブリンの醜さを引き立たせたほうが、ギャップがでてラストを見たときに読者の驚きが増すかも知れない、とこんな感じで。



■ 『転』『結』へいたるための道筋を説明する場として『起』『承』を考える

 『転』と『結』が定まったら、あとは始まりである『起』と、そこから『転』にいたる道筋『承』を考えるだけです。


 具体案が出にくかったら、とりあえず今の流行りのテンプレで自作に合いそうなものをなにも考えずに借りて『起』を作る。そしてそこから『転』『結』の流れにどう持っていくか考え、その過程で最初にあった『起』の内容が邪魔になったら、都合がいいように改変していけばいいでしょう。


 また、別のアイデアを発展させて『起』を新たに構築するという手もありますが、それはあとの回で説明します。


 そしてできれば構成中に『起』には『つかみ』を、『承』には『お約束』を入れることができればなおよい感じになるかと。ただ思いつかないようならムリをしなくても大丈夫です。『つかみ』『お約束』はキャラ描写などでも入れることが可能だと思いますので。



 次回は『美形のゴブリン』を例にして上記の手順を実践する、その思考の流れを具体的に書いてみたいと思います。

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