その6.TV放映される映画のCMのタイミングには、映画編集者の意思が宿っている

 前回は、自作品のネタの供給源として、実体験の他に映画作品から学び取る意義を語りました。

 今回はその続き。民放TVで放映される映画の冒頭をCM直前まで見ていく意義を語ります。



 TV局が映画放映時に恐れてることの1つに『CMが始まったとたんに視聴者が他のチャンネルに切り替える』がありまして。とくに最初のCM付近での離脱率が一番高いという統計も出ています。


 故に映画編集は、最初のCMの位置を念入りに検討し、CMが始まるまでの間で視聴者に『この映画の続きを見たい』と思わせる使命を負うことになるわけで。


 つまりほとんどの場合、始まってから最初のCMまでの間には(編集者が考える)その映画の『つかみ』が入っているということなのです。


 映画はもとより小説や漫画にかぎらず、『つかみは作品の成否の半分以上を占める』と言われている部分。ここが成功しなければそのあとのストーリーもアイデアも意味を成さないわけで。


 乱暴に言えば、つかみさえ上手く作れるのなら、あとはそのつかみの展開を繰り返せばとりあえず最後までは見てくれるでしょう。勉強するコストをかける場所を限定するならまずそこになるだろう、ということです。


 また『CMまで』と限定するもう一つの理由として、たとえつまらない映画でもCMが始まるまでは我慢して見れるだろうというところもありますw それは、勉強を継続させるという意味では重要なファクターになると思います。


 以上のような理由ですが、例えば録画する環境がない場合はU-NEXTやHuluなど動画サービスからおすすめを片っ端から見ていくでも構いません。なによりも勉強を始めるのが肝心なので。

 その他NHKでの放映など、CMがない場合は時間を(三幕八場構成から考えて)大体30分くらいで区切るといいかと。



 では、具体的な手順をまとめます。


1、TV映画が始まってから『最初のCMが入るまでの間』の内容を『観察』

2、何が面白いのか(または何がつまらなくしているのか)を『発見』そしてそれを『記録』『蓄積』

3、それが終わったら続きは見なくてもOKだし、続きについて観察発見記録蓄積を繰り返してもいい(ちなみに『好みでもないのにどうしても続きが見たくなるようなつかみを持つ作品』は学習として栄養価が高いかもしれない)

4、それを1日最低1回おこなう。気が向けば2回以上繰り返してもいい。

5、折りをみて、蓄積された内容を『展開』していく。



 問題としては前述の通り、『展開』のさせ方が足りないと元の作品が透けて見えてしまう可能性があることでしょう。


 特に「(人物の)置換」だけ使った展開のさせ方は、大体元ネタがバレると思ったほうがいいです。既に世に出ている作品でもそういうものを少なからず見かけますが……。そういうことにならないように、キチンと逆転や誇張も使用し、ネタを取り入れた作品は事前に複数の知人に見てもらって反応を確認したほうがいいでしょう。


 理想は「観察」「発見」の時に自分が面白く感じているモノの本質を捉え、それを構成している要素がなんであるのかを分析したうえで、その本質を崩さないように構成要素以外を別のものに差し替える。そこまでできれば、それは貴方のオリジナルのアイデアと言い切ってよいかと。


 などと偉そうなことを書いてはいますが、自分はその域にいたるにはまったく分析力も技量も足りていないわけで。自在にそれができるようになりたいものです。


 ちなみに私論として、要素を「舞台」「人物」「行動(性格)」に分解し、せめてそのうち最低2つを元ネタから大きく変えるのが近道と思っています。


 例えばドラゴンボール初期は西遊記が元ネタになっていますが、主人公たちが活躍する舞台は中国とは微妙に違う近未来で、キャラの行動性格は本来のキャラとは大きく変わっているわけで。そういった食い違いの方向性が各キャラによってまちまちで、それが複雑に絡み合い、ドラゴンボールを単なる西遊記のパクリとは別の作品に昇華させているのだろうと思います。


 また、一般になろう系と呼ばれている作品群は『舞台』以外の2つを差し替えた1つの例だと思います。ナーロッパみたいな言われ方はされますが、それは『パクリ』というより『マンネリ』という意味で言われているように思います。


 『行動』を変えずに舞台や人物の2つを変えるのは、(見た目は違っても、近しい物語が進むことになるので)一番指摘を受けやすいかもしれません。そういう展開は、元ネタが神話や古典などの場合に限定した方が無難かも。




 次回は、物語の構成についてまとめていきます。おなじみの「起承転結」ってやつです。



追記

 以上の記事は大塚志郎先生作「漫画家庭教師なお先生」第1巻の一部の内容を自分なりに発展させ実践しているものです。


 こちらの作品も(極論的なところはありますがw)ためになる話が満載です。

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