その5.『観察』は実体験でなくてもいい

 今回は私論+他の制作論の内容を取り入れたものとなります。


 大百科の中で説明されている「観察」「発見」「記録」「蓄積」「展開」。これを続けていくことは、単に勉強に留まらず、同時にネタ帳の作成を兼ねることにもなっていると思います。


 大百科で「観察」に関してオリジナルの実体験が重要視されているのは、その辺りの配慮もあるのでしょう。ネタ帳の内容が自分だけの体験で埋まっているのなら、そこからできあがる作品もオリジナリティの高いモノが期待できるわけで。


 ただ、実体験でそういうネタに出会うのは半ば運によるところもあるわけで。効率としては問題があるといえます。また実用面でもそうですが、勉強としておこなう場合でもやはり数はこなしたいところ。


 なので日常的に面白いことがあふれている人でもないかぎり、実体験のほかにもなにかネタの供給源を用意することが望ましいのかなと。


 そしてその供給源の候補として『他者の制作物を見ていく』というのが、誰もが採用しやすいものであると思われます。

 自分が出会った作品を(善し悪し好き嫌い関係なく)『観察』し、そこから『発見』し、『記録』し、『蓄積』『展開』していくわけです。



 では制作物を供給源とする場合、具体的にどんなものを採用するのがいいのか。

 色々候補はあると思いますが、個人的には『民放TVで放映されている映画』をおすすめします。


 その際ジャンルにはこだわらず、基本全部録画して片っ端から見ていきます。録画や時間の都合などで選ばなければいけない場合は、可能な限り『自分の見ていないジャンル』『あまり聞いたことのないタイトル』を優先してください。特に昼や深夜、衛星放送でやってるモノがおすすめ。


 ちなみに全部見る必要はなく、最低限『映画が始まってから最初のCMが入るまでの間』だけで構いません。



 なぜ映画なのか。

 ポイントとしては、まず『比較的人が見ていない』というのがあります。


 漫画、アニメはそのファンならちょっとマイナーな作品でも名前くらい思い当たると思いますが、映画はファンでも有名作以外は名前もしらない場合が多いわけで。


 また元ネタを見破られたとしてもよほどそのままでない限り大目に見られる空気があります。ていうか、漫画やゲーム作品のメイキングで「映画の○○を参考にしました」みたいなことを公言してしまってるケースもあるわけでw


 それが漫画やアニメ作品を元ネタにした場合。かなり念入りに展開させてわからないようにしても、勘の鋭いアニオタなどに見破られてしまい、最悪炎上する可能性も少なくないわけで。


 もちろん映画とて参考にしやすいからといって丸パクリが許されるわけではないですが……。なので展開する場合は元ネタがわからないように念入りに逆転・誇張・置換で崩しまくったほうがいいでしょう。といいますか、そうやって元がわからないくらい崩しまくったネタは自分のものと言い切ってかまわないかなと。



 そしてポイントの2つ目として『元ネタを知っていればいるほど展開がしにくくなる』というのがあります。


 例えば、極端な話『貴方が一番好きな作品を元ネタとして展開させてください』と言われたときに、いい感じに展開できますでしょうか?


 おそらくですが逆転、誇張、置換のどれをやっても今一というか、なにか完璧に仕上がった料理に変な調味料を混入してだいなしにしてしまう感じがしてくるのではないかと。


 これは好きな作品じゃなくても、例えば漫画や小説のお約束ですとかそういった流れを展開で崩すときにも発生しえます。


 勉強としてはかなりやりがいのあることにはなるのでしょうが、そこで時間を余分にかけるのも本末転倒ですので、慣れるまでは避けたほうがいいでしょう。



 ちなみに以上2点が理由ですので、例えば「自分は漫画やアニメより映画が好きで、書きたい方向性も文芸やリアルドラマだ」という場合は、逆に漫画やアニメを勉強の対象にしても構いません。




 そして映画でも『TV放映』と限定していますが、その理由は比較的『ランダム性が高い』から。


 というか基本、自分でピックアップするとどうしても偏りが出てくるかと思われます。その点TV放映作を選ばずに片っ端から見るスタイルなら(マイナー物が若干少ない感じはありますが)自分で選ぶより色々なジャンルのものが出てきやすいということです。


 さらにTV放映の中でも『民放TV』に限定していることにも理由があります。

 『映画が始まってから最初に流されるCM』そのタイミングには『その映画をTV向けに編集した人の意思が宿っている可能性が高い』のです。



 いったんここで中断します。

 続きは次回に。

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