箱の中身はなんでしょね?【KAC20243】

だぶんぐる

アイテムボックスはいる

あるところに異世界転生した男がいた。


男は、トラックに轢かれそうになった子供を助けたので転生の際に女神から無限の魔力とアイテムボックスを貰った。


アイテムボックスとはあらゆる物の保管が一生可能な魔法の空間。

しかも、容量は無限。


男は異世界に転生し、無限の魔力で全ての敵を倒し、世界を平和に導いた。

この世の宝の全てを手に入れ、食料を保管し、100年は生きていける財をアイテムボックスに保管した男は思った。


『何』まで入る?


男には、敵もおらず、女もよりどりみどり、財もあり、この世のすべての謎が解けてしまう。

残ったのは知的欲求。


男は、実験を始めた。


この世のありとあらゆるものを入れ始めた。


大きな巨人の鎧も入った。


マグマの塊も入った。


海もいつまでも入るので途中で止めた。


まさしく無限だった。


では、保管できないものはないのか。


食べ物が入るのであれば、有機物が入らないわけではない。


男は、試しに先日殺したばかりの魔族の死体を入れてみた。

入った。


それではと嫌がる生きたままの魔族を入れてみた。

入った。


時間が経っても変わらないのかと魔族をそのまま1か月放置したが生きていた。

魔族には時間の感覚がなく入る前に垂れ流していた涙や鼻水がそのままだった。


男は考えた。

アイテムボックスの中に居れば死ぬことなく未来で生きることも出来ると。


男は、奴隷を養子にしアイテムボックスの権利を譲渡し、命令した。


「10年後に必ず呼び出すこと。財と力はお前に与えてある。呼び出さねば奴隷の制約で激痛がお前を襲う」


そう告げて男は、奴隷のアイテムボックスに入っていった。

10年後男がアイテムボックスから出ると、素晴らしい世界が広がっていた。


「ご主人様がいないお陰で人々は私の財と力によって平等に幸福を得ています。だから、ご主人様……またお休みなさい」


そこから男の記憶はない。もう記憶することもない。

箱の中で生きもせず死にもせず男は何かとして在り続けた。

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