第51話 カップリング・ラブソディ2

「それじゃあ話をまとめるわね。その女の子が他の女の子に告白されて、それでどう返事していいか困っている。そういうことでしょ?」


「はい」


「七海くんは……、じゃなかった。告白されたその女の子は彼女のことをどう思っているのかしら?」


「どうなんだろう……、好きなのかな?」


「一緒にいてドキドキするって?」


「……そう言っていた気がします。一緒にいて楽しいって……」


 うひょひょーい! キターーーーーーッ!!


「そそ、そそそ、それは互いに好きってことじゃないかしら? 告白を受ければいいんじゃない? 性別なんて些細な問題だと先生は思うなぁ」


 無意識に私は早口になっていました。


「でも……実はそれ以外にも、その子には秘密があって――」


 彼が大切なことを話そうとしているのに、私は上の空です。


 私の脳裏に浮かんでいた疑問は『一体誰と?』という疑問、その一点です。


 このクラスで彼と一番仲が良いのは……――。


「!?」


 そのとき、私は気付いてしまったのです。


 ジャージの胸に刺繡された名前が『七海』ではないことに……。そこに縫い付けられたネームは――。


 あわわわわわわああああわあっわわっ!?

 いっ、いず、いず、いいいずいずいずッ! 和泉くんのジャージを着てるぅっぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅうッ!!


 はぁはぁはぁ、他人のジャージを着るという行為は彼氏のパジャマを着る彼女に等しいがごとし。


 あの見た目はちょっとキツそうだけど実は紳士的な和泉くんと、中性的な七海くんがカップルってことよね!?


 奇跡のカップリングキターッ!!


 セオリー的にはイズ×ナナよね。でも敢えてナナ×イズも良い!


 芯が強い七海が和泉に迫る!

 

 たっ、たたたたた、たまらんッ! あああああああッ! 妄想が捗るで候ッ!


「先生? 聞いてます?」


 またもや私はハッと我に返りました。


「も、ももちろんよ。せぇ、せぇ……、せぇん、先生としては、ありのままの彼女でいいと思うのです」


「ありのまま……」


「そう、ありのまま」


「そうか……、ありがとうございます。なんかスッキリしました――、ので彼女にも話してみます」


 照れ笑いを浮かべ、和泉ジャージを着た七海くんは教室を出ていきました。

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