第47話 やっぱり俺よりサイテーだなと

 登場人物


 和泉いずみ 七海のクラスメイト、見た目は俺様系イケメンだけど常識人、1班の班長

 委員長 クラスの委員長、メガネ

 山田 6班の班長、クズ

 小島 2班の班長、アニメ好き

 真田 3班の班長、シスコン




 そう、これこそ最大の謎。

 今まで七海が自分から進んで女装したことはなかった。

 それがなぜ?

 いくら寝ぼけていたからってあり得ない。


 おそらく夏休みに入ってから七海に何かあったのだ。


 俺と会っていた日以外に事件が起こった。

 クラスメイトたち、特に山田が良からぬちょっかいを七海にしたのではないか……。


 だから俺は探りを入れる意味も含めて委員長に相談し、班長会議を開いてもらった。


「七海なりの冗談だろ? きっと俺たちを驚かそうとしたんだよ」真田が言った。


「違う……」と俺は否定する。


 班長たちの視線が俺に集まり、委員長は「俺たちは七海を追いつめてしまったのではないだろうか」と俺が言わんとしたセリフを引き継いでくれた。


「どういうことだよ?」


「女装を強要し過ぎて精神が病んでしまったのではないかということだ」


「おいおい……そこまで気にすることじゃないだろ。ちょっとふざけただけじゃないか……」


「それが本人にとってとてつもなく苦痛だった、それだけのことだ」


 委員長はメガネのブリッジをクイッと指で押し上げる。


「そんな……、俺たちは意図せずに七海をイジメていたってことか?」


「そういうことだ」


「なあ、夏休み中に七海と会ったヤツはいるか?」


 脈絡のない俺の問いに互いの顔を見合わせた班長たちは、一様には顔を横に振った。


「そうか……」


 自分は抜け駆けして七海と会っていたクセに、クラスメイトを疑うなんて最低野郎だ、俺は。


「それでは決を採る」委員長は言った。


「決を採る?」俺は聞き返す。


「今度の夏祭りに七海に浴衣を着せる計画は白紙にする、賛成の者は挙手を」


 ふっと笑みを浮かべた山田が「七海のためだ、アグリー」と手を挙げた。


「アグリー」

「アグリー」


 山田に続いて班長たちが手を挙げていく。


「……お前ら、そんな計画を立てていたのか」


 こいつらやっぱり俺よりサイテーだなと、俺は思ったのだった。

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