第46話 山田がついに口を開く

登場人物


 和泉いずみ 七海のクラスメイト、見た目は俺様系イケメンだけど常識人、1班の班長

 委員長 クラスの委員長、メガネ

 山田 6班の班長、クズ

 小島 2班の班長、アニメ好き

 真田 3班の班長、シスコン




 突然の変態趣向カミングアウトに一同が視線を向けると委員長はこほんと咳払いをして 「そんな謎の美少女の正体が七海だということは、まだ他クラスには気付かれていない」とシレっと続けた。


「こいつ……スルーするつもりだぞ」小島は懐疑の視線を委員長に向けた。


「まあ、どうでもいーんじゃね? 聞かなかったことにしてやろうぜ」


 委員長の窮地に助け舟を出したのは真田だった。


「お前らもよ、他人に知られたくない性癖の一つや二つはあるだろ?」


 その一言に一同は沈黙する。かくいう俺にも思うところはある。


「七海が気付かれなかったのは授業開始の直前だったからな。遠目だと事情を知っているヤツじゃなければ男だって分かんないだろ。なによりあのレベルだぜ? 街を歩いてたって誰も男だなんて気付かねーよ」と真田は自然な流れで話題を七海に戻した。


「うむ、そこでだ。たった今から『謎の美少女の正体を口外してはならぬ』と緘口令を敷く。各班の班員には班長の貴様らから連絡を頼む」


 委員長は委員長の役割を貫き通すつもりだ。


「はあ? どうしてそこまでするんだよ?」眉根を寄せた小島が肩をすくめる。


「当然の処置だ」


 ここまで沈黙していた山田がついに口を開く。


「七海の存在が他のクラスにバレたら、七海という富を独占できなくなってしまうんだぞ?」


 そのセリフに小島はハッと息を呑む。


「そ、そうか……。獣みたいな野郎共が七海に女装させようと押し寄せるに違いない」


 うむ、と委員長がうなずく。


「そして、二つ目だ。こっちが本題といえる」


 ごくり、と各班長たちは喉を鳴らした。


「それは七海が……、あいつが誰にも強要されてもいないにも関わらず女装したことについてだ」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る