第四章
第43話 いっそ彼色に染まれるなら
登場人物
和泉 見た目は俺様系イケメン
七海 中性的な顔立ちの少年
夏休みが始まってから俺は七海と買い物したり映画を観たり、プールに行ったり、色んなところへ出かけている。
七海のアニキからの課題(なのかな……)である七海とのキスはまだクリアしていない。
できたのはストローを共有した関節キスだけ、変に緊張して意識していることがバレなかったか心配だ。
キスするチャンスは何度かあったといえば会ったけど、そもそも七海の気持ちを無視してキスなんてしていいのか?
俺にとってファーストキスだし、たぶんあいつもファーストキスのはず。
初めてが男って……、しかも別に付き合っている訳でもないのに、いくらなんでもダメだろ。
七海の兄貴には正直に自分には出来ないと伝えよう。別に俺の気持ちを彼に認知してもらう必要なんてないのだ。
それに自分の想いが本物なのか、どういう類の物なのか、正直なところ俺自身よく分っていない。
あれは海に行ったときだ。
女装していない七海の水着姿(半裸とでも表現すればいいのだろうか)を見てもなんとも思うことはなかった。
つまり俺は完全にそっち側の人間になった訳ではないらしい。
俺が恋をしているのはあくまで女装した七海なのだ。もちろん女装していなくても七海のことは好きだ。けど、やっぱり本質的に恋とは違う。
また振り出しだ。
ぐるぐる周る、想いは揺らぐ、今の俺は玉虫色。
ああ、いっそ一色に染まれるならどれだけ楽だろうか。
それにしても七海のヤツ遅いな。
今日は夏休み期間中に一度だけある登校日、もうすぐ朝のホームルームが始まる時間なのに、なにやっているんだ。
まさか登校日を忘れたか?
いや、あいつに限ってそれはない。
そのとき、ガラリと教室の後ろの戸が開いた。
やっと来たか――。直後、教室がざわついた。
振り返ると七海がいた。
頭には黒髪ストレートのウィッグ、それから以前山田が渡した山田のお姉さんの制服を着ている。
思わず息を呑んだのは俺だけじゃなかったはず。
だって、そこに物憂げな表情をした完璧な少女が立っているのだから。
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