第36話 本当に好きなのか

登場人物

 和泉 見た目は俺様系イケメン

 七海の兄 七海のお兄さん、弟想いの真面目な人



「それは……ど、どういう意味ですか?」


「お前はあいつのことが本当に好きなのかと聞いているんだ!」


 テーブルに拳を叩きつけた七海兄の眼は真剣だ。


 俺と七海は同性だ。だから自分が一体何について問われているのか混乱した。ただ彼が弟を本気で心配していることはヒシヒシと伝わってくる。

 七海から聞いていた兄のイメージと、俺の前にいる彼のイメージが噛み合わない。


「俺は七海のことが……」


 そう言いかけて俺は口を噤んだ。

 だって続くセリフは七海への告白に等しい。

 口にすれば今まで秘めていた想いを告げれば、もう引き返すことはできない。

 それでも、七海に対して真摯な七海の兄貴に嘘を付いたり、はぐらかしたりすることは卑怯に思えた。


「七海のことが、好きです」


「どれくらいだ?」


「……いつも七海のことばかり考えています。会えない日は会いたくて辛いです。今日、偶然街で会えたときら本気で嬉しいかったです……」


 素直な想いを吐露した恥ずかしさからなのか思わず噛んでしまった。


 そして俺の告白を聞いても、彼は嘲笑ったりしなかった。

 ただ真剣な眼差しで俺を見つめたまま、「障害は多いぞ?」と言ってニヒルな笑みを浮かべた。


「はい、それでも乗り越えてみせます」


 そう俺がはっきりと告げると、彼は安堵したかのようにふっと息を付いた。


「良く言った。しかし俺はまだお前を認めた訳じゃない。お前の本気を見せてもらうぞ」


「本気……、ですか?」


「ちなみにお前たち、どこまでいった?」

「え?」


「Aか、BかCか?」


 ABCだって? そんなところまで進展するかどうかなんて考えたこともなかった。

 でも解った。

 七海兄は本気なのだ。

 本気で弟のことを想っている。

 だから俺も正直に答えなくてはいけない。


「まだ、手を繋いだくらいです」


「そうか、それならこの夏、弟とキスをしろ。そうすればお前の覚悟を認めて応援してやる」


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