第34話 手を掴む
登場人物
和泉 見た目は俺様系イケメン
七海 中性的な顔立ちの少年
彼女の顔を見た瞬間、俺の心臓が跳ね上がる。
出会えたことに対する喜び、そして予想外の出来事による緊張。さらになぜ七海はあんな格好をしているのだという疑問。
すべてが
声を掛けるべきか迷った。
声を掛けるべきか迷っていた、けれど俺は七海のその目に浮かぶ涙を見た瞬間、居ても立っても居られなくなって歩み寄っていた。
「……こんなところで何やってんだ? 七海」
ハッと顔を上げた七海は、
「い、和泉……」
咄嗟に濡れた頬を拭った。
それが当たり前のように、俺は七海の隣に腰を降ろす。
「変なところ見られちゃったな、あはは……」
微苦笑を浮かべる七海に、俺は首を振っていた。
「いいんだ、俺でよかったら話を聞くから。なにか……、嫌なことでもあったのか?」
「……」
しばらく握りしめた自分の手を見つめていた七海だったが、声を震わせてポツリポツリとこれまでの経緯を語り始めた。
実の兄から嫌がらせを受けていること、無理やり女装させられていること、写真に撮られて脅迫されていることをを知った俺の胸に、なんともいえない苛立つと怒りが込み上げてきた。
はっきり言ってしまえば俺も七海の兄貴と同じなのかもしれない。それでも、そうだとしても七海を救ってあげられるのは俺だけだと思った。
「七海、いくぞ」
俺はベンチから立ち上がる。
「どこに?」
七海は小首を傾げ、ぱちくりと目を瞬かせた。
「俺がお前の兄貴にガツンと言ってやる!」
俺は浴衣姿の七海の手を掴んで歩き出す。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます