第19話 男同士で手をつなぐ
登場人物
七海 中性的な顔立ちの少年
和泉 見た目は俺様系イケメン
「わるい、待ったか?」
そう言って駆け寄ってきた和泉に、「いや、いま来たところ……」とオレは答えた。
日曜日の昼下り、オレたちは地元を離れ、隣町の駅で待ち合わせていた。
ちなみにオレは女装している。服装は山田のお姉さんのブレザーを着ている。もちろんウィッグも付けている。
「じゃあ、行こうか」
「う、うん……」
少し気まずい雰囲気と緊張と恥ずかしさを引きずったまま、オレたちは手をつないで二人並び歩きだす。
男同士で手をつなぐのは幼稚園以来だ。
改札を離れて、東口のバスターミナルへ向かう。
バスターミナルの7番降り番でオレたちを待ち構えていたのは、一人の少女だった。
まるで
そして、手をつなぐオレと和泉の存在に気付いた彼女が、
(めっちゃ睨んでる……)
敵意むき出しでオレのことを睨んだ。
まず、この状況を説明するには、昨日の放課後にさかのぼらなければならない。
――@旧校舎生徒会室
和泉がオレに彼女になってくれと言った後だ。
オレがうろたえ、ろうばいし、言葉を失い度肝を抜かれていると、和泉は落ち着いた口調で告白した理由について語り始めた。
「告白を断るために彼女の振りをしてくれだって?」
「頼む。なんど断ってもあきらめてくれないんだ」
和泉はガラにもなく手を合わせて頭を下げた。
「無茶いうなよ……女装だってバレたらどうするんだ」
「そのときはそのときで構わない」
「オレが構うわ」
「それにお前くらいのレベルの子が彼女ならきっとあきらめると思うんだ」
どんなレベルだよ……。
オレは途方にくれそうになったが、あまりにも和泉の真剣な態度にその申し出をしぶしぶ承諾するしかなかった――。
だが、実際に会ってみれば断るのが勿体無いくらいの美少女だった訳で……(気が強そうではあるが、これくらいの方が和泉にはちょうど良い気がする)。
和泉の話によれば、彼女は和泉が通っているピアノ教室に最近入ってきた子らしい。
そこで、一目ぼれされたとのこと。
あまりの猛アピール&チャージに和泉は「彼女がいるから」と嘘を付いて断ったら、「じゃあ会せて」という流れになったそうだ。
和泉は嘘が苦手だから、きっと女の勘が働いたのだろう。
で、「わたしより可愛かったらあきらめる」と断言したそうだ。
すっごい自信だ。
その自信に裏打ちされた絶対的な態度にオレは少々圧倒された。
どんな手を使っても欲しい物は手に入れる! そう顔に書いてある。
オレが彼女より可愛いかどうかは別として(そもそもそういう問題ではないけど)、とにかくラブラブな恋人を装う必要がある。
手を繋ぐオレたちを見ても怯むどころかオレを睨む彼女の表情からビシビシ伝わってくるのだ。
「はあ? アレが彼女なの!? ジョーダンでしょ!?」と、はっきりと聞こえてくる。
はいはい、女装男子ですみませんね……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます