第14話 不純な恋心
登場人物
和泉 見た目は俺様系イケメン
七海 中性的な顔立ちの少年
最後のテストが終わる。
チャイムが鳴り響くと同時に教室は悲観と落胆、そして安堵したような呼吸音が同時に混ざり合った。
俺はそのうちのどれだったのか。
集中が途切れた途端に、どっと体が重くなった気がした。
ただ、今までで最高の出来だと思う。学年首位とまではいかないが前回より順位はかなり上げられたはず。
もしかしたら七海に勝てるかもしれない。
「和泉、テストどうだった?」
どうやら七海も手ごたえがあったようだ。やりきった表情で俺の席の前に立っていた。
「ああ……」
互いの健闘を称えるように立ち上がったその瞬間、俺の全身から力が抜けて視界が暗転して、意識が途絶えた。
◇◇◇
目が覚めたとき、俺はベッドに寝ていた。
そこが保健室のベッドの上であることに気づく。
自分がなぜここにいるのか分からない。
「あ、起きたか?」
ベッドを仕切るカーテンを開けたのは七海だった。
「七海……なんで俺はこんなところにいるんだ?」
「覚えてないのか? テストが終わった後に意識を失って倒れたんだ」
ああ、そうか……、そういえばそうだった気がする。
七海は俺のベッドの横にキャスターの付いた丸椅子を持ってきて座った。
「……いま、何時だ?」
「午後一時半だよ。腹減ったなぁ」
午後一時半、授業は午前で終わりだからもう放課後ってことか……。
「俺の目が覚めるまで待っていてくれたのか?」
「あー……、まあな。保険の先生が職員会議だかなんだかで戻ってこないみたいだし……。その、お前がこうなった原因はオレにもある訳だしさ……」
申し訳なさそうに七海の声が沈んでいく。
「まあ、そうかもな」
「おい、ここは嘘でも『そんなことない』って言えよ」
七海が俺を恨めし気に睨む。してやったりと俺はクスリと微笑む。
「どうせなら同世代の女子に看病されたいもんだな……」心にもないことを俺は呟く。
「ぜーたくいうなよ」
七海は呆れるように言うと今度は大真面目な顔に変えて訊いてきた。
「なあ、和泉……なんでこんな無茶をした? こんなになってまでオレに勝ちたかったのか?」
理由――、七海に勝ちたかった理由。
ずっと気付かないようにしていた感情が心の表層に浮かび始める。
それが七海を誰にも取られたくないという醜い独占欲であることを、女装した七海に恋をしているという不純な恋心を……。
今、ここで伝えるべきなのだろうか。
七海なら理解してくれるかもしれない。
でも、告白したらもう元には戻れないだろう。もう俺たちは元の関係には戻れない。
それを犠牲にしてまでこの想いを伝えるべきなのだろうか――。
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