アルベルト・シュバルツの指南書

第〇一鍵:十石二鳥理論炸裂

第〇一鍵:十石二鳥理論炸裂


「なあBOSS、なんでもかんでも鳥撃ちで

 例えるの、やめた方がいいよ?」

「ええ? 僕の十石理論をして未だ止める人間がいるとは……」


「ゴブリンでもハーピーでも止めると思うけどなあ」

「十石投じてみんさい、何が起きる?

 鳥は飛び立つよなあ、身体は疲れるよなあ」


「仕留められてねぇじゃん!」

「そうなんだわ、十石ちょっと多いんだわ」


「じゃあ五石二鳥って訂正しなよ」

「ううん、訂正すんなら六石二鳥かなあ」


「一石遊びなんて要らないって」

「要るんだわ、仕留めるならマヂ六石説でいく!」


「それよかさあ、ウチの学校って赤鍵と緑鍵しかないじゃん」

「僕はREDでキユスはGREENな」


「他校に潜入して合鍵作ろうよ」

「ううん、青鍵ならまだしも……」


「そうか、黄鍵持ったら因縁吹っ掛けて来る輩が……」

「ちょっと僕達のLOCKER LEVELじゃ危険だわな」


「オ・ゴーリに他校なんて、そもそもないかあ」

「校区外出るだけで1ペナルティは喰うぞ?」


「もういい加減、飽きたよお、赤鍵LOCK。

どうせろくでもねえ魔物たちだ」

「……ちょっと! キユス!(前! 前!)」


「火属性でごめんな坊主。話ぃ訊かせろやっ!」


(でででで、出たあ! フレイムサイコロプス)

(どどどど、どうする? じゅ、十石投じるか?)

「んー? なあに小声で話してんだあ?」


「そこまでになさい!」「……お、お爺さん、あなたは?」

「爺さん、格好つけちまったなあ。喰らいなよ、火炎こん棒!」

老体、軽々と身をひるがえし、こん棒を回避。

「救世主さまあ、お助けを!」

「UNLOCK! YATACROWSいきなさい!」

『ガァァァァァ! ガァァァァァ!』

けたたましく啼く

三本足の生えたカラスを使役している老紳士。

「BLACK CAKEYの底力をお見せしましょう!」

的確に羽ばたいて、サイコロプスのこん棒を身躱すカラス。

「トライアングルシュート!」

鋭い爪牙で完膚なきまでに相手を痛めつける。

どうやらサイコロプスは退散のご様子だ。一件落着。

「キユスくん、イエクくん、

初めまして、わたくし、アルベルトと申します」

「え……どうして僕達の名前を?」

「緑赤鍵の少年を捜せというお達しがありましてね。

属性反応がほら、こんな風に……」

アルベルトお爺さんの持つ水晶に「緑赤」「赤緑」の点滅が。

「合鍵造りは珍しいことではありませんが

 二個持ちの少年を片っ端から当たろうと思っていました。

 最初に声を掛けたのが、偶然、君達で……」

「あのう、お爺さんの黒鍵を合鍵しちゃ、駄目かなあって」

「それは受けられない相談ですな。しかし、例外が。

この老体をゆうに超えなされ。さすれば

BLACK MASTER CAKEYを君のキーホルダーに」

合鍵を安易に造り過ぎると、モンスターが反応して

ミスマッチングが起こり易くなる。勝てないBATTLEの勃発だ。

今、黒鍵を闇雲に作っても

闇属性のモンスターが寄って来ることになるだけ。

オ・ゴーリは初心者向けの冒険地。火炎のこん棒には注意だ!

フレイムサイコロプスとの再戦や如何に?

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