悪役令嬢の宝物

あきこ

悪役令嬢の宝物

 これらの箱には幸せが詰まっていた。

 毎年、誕生日に婚約者の第一皇子から送られて来るプレゼントの箱。


 箱が届く度、私の心ははじけるように舞い上がり、自分は特別で幸せな人間だと思う事が出来た。


 私は嬉しくて、これまでに貰った箱や包み紙、そしてリボンを全て大事に残していた。

 他人ひとから見ればただのゴミでも、私にとっては大切な宝物だ。


 彼からの贈り物は、お互いの成長に伴い高価な物に変わっていったけど、例え贈られる物が、野に咲く花1輪でも私は嬉しかったと思う。

 

 それにね、本当は……

 15の頃からは欲しいと願うものがあったの。

 だから、普段から指輪をつけずに彼から送られるのを待ったわ。

 けど、そんな私の恋心は、いまだ彼に届いていない。

 

 いえ、私はもう知っているのよ。

 彼が私にそれを送る日は来ないという事を……


 どうやら彼が選ぶのは、異世界人が聖女として転生したと言われている妹の方で、私は妹を虐め悪行の限りを尽くす悪役令嬢として処刑される運命……らしい。


 なぜそんな事が分かるのかですって?

 それはね、25歳で処刑されて、17歳に死に戻って来たからよ!


 でも、私は妹を虐めたりしてないの!

 どちらかと言うと、全て奪われ酷い目にあったのは私の方!


 だから処刑される時、皇子が述べた罪状を聞いて、本当に悔しくて涙が出たわ。


 ええ、全部覚えていますわ。


 妹の悪口を言ったという言う小さな罪から、国家転覆を企てたという罪まで……時間をかけて全てを述べられていましたもの。

 全く身に覚えのない事ばかりをね……


 今ね、その罪状を書き出して箱に入れているのよ。

 7歳の時から去年の17歳の誕生日までにもらった10個の箱の中にひとつずつね。


 これから私は彼が罪状で述べた事を順に実行していくの。

 そうよ、悪役令嬢というなら悪役令嬢らしくね……

 

 そして実行し終わったら、その罪状の入った箱を燃やしていくのよ。


 ふふ、妹と皇子……

 何箱目まで、生き残っていられるのか楽しみだわ。

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