ドラコミアン・ボーテネック

森茶民 フドロジェクト 山岸

魔法使い





 魔法使いは迫害されている。



 魔法使いに成れる素質持っていたら殺される。



 なぜ、そんな事をするのか?



 なんで、そんな酷い事をするのだろうか?




「各員へ伝達!現時点を持って、この場をする!!」


「了解!完全放棄だ!撤退ぃ!!」



 焼煙臭い血煙漂う草っ原。

 フリルのようなヒラヒラした物が沢山付いたコートを着た百人程の集団と、革や鉄を纏い弓を携えた何百人程の集団とが、物を飛ばし合って殺し合っていた。

 しかし、どうにも矢に穿たれ倒れたヒラヒラコートが多く見受けられ、コートの集団は森の方へと走って逃げて行く。

 もうそろそろ森だというその時、その集団の殿となった幾人かの内から、そのレースの一部を破り取り、3枚ほどの端切れが放り投げられた。


 魔術の基点。魔法を記したスクロールだ。


 それを認めた鎧纏う相手方は、即座に破壊せしめんと矢を放つが、その内の2枚が到達の前に水の壁を展開し、その水壁へと尽くの矢は絡め取られ、瞬間、水壁の裏側が光った。



 一瞬の事だった。



 絶大な範囲へと光を伴い齎された絶大な熱放射。



 それに伴い尽くを汚染する毒の衝撃。



 聳え立つ茸のような、鍵穴のような輪郭を描く大煙。



 音も無く灼き尽くすめしいの毒大爆弾。




 ──核爆発だ。




 魔法に干渉できる才を持つ者は、例え稚児であろうとも、いとも容易く、ただ無知なままに、願いのままに、この爆発を伴って願い実現させようとする。

 勿論、祈願者は、基本的にこの爆発の中心に居るから、まず助かる事は無く、そして基本的に、この爆発が起きればその願いは顕現しない。

 この爆発は、ただ些細な失敗をした時の反応に過ぎないのだから。


 けれど、それは最重要な事じゃない。核爆発なぞ、どれだけ起きたと思っている?汚染なぞ、最早大概の生物には耐性が出来ている。

 最も重要な事はその後、毒大爆発の後のこと。

 願いに答えようと、際限なく現へと顕現せしめようと集積し、結合され、昇華した純粋魔力は、起点となった電気と伴に膨れ上がり放射されるが、その時、その効果範囲内部は一時的な魔力欠乏状態へと陥る。

 そうすれば、その欠乏状態と成った範囲へと周囲の魔力が集まりだす。

 この流れは《魔力風》と呼ばれる現象であり、魔力風とは、いうなれば魔法触媒である。それも、その活性化点がだとか、だとか、そんな些細な現象だけで、世界の尽くは入れ替わり、肥大する程の。

 魔術師は、意図的に極小の魔力風を起こす事で様々な現象を簡単に──とは言っても、を起こすのはとても苦労の要る作業だが──引き寄せる。

 しかし、毒大爆発は、基本的に山一つは呑み込むほどの大きさだからして、その魔力風は絶大なうねりと化して、四方八方から魔力は押し寄せては吹き上がる。



 そうして、《高濃度魔力滞留領域》となったその勢力圏内は、魔境へと、死の空間へと変貌する。



 あるモノは全体から目玉が垂れ下がる。


 あるモノは全体から石塊が飛び出し溢れる。


 あるモノは木の葉や花が生える。


 あるモノは手足が増え、はたまた減り、あるモノは羽毛が生え揃い、はたまたウロコが生え揃う。


 あるモノは、あるモノは、あるモノは…………。



 これは、撒き散らされた爆発の残渣が魔力へと形を戻すまで、際限無くその勢力を拡大させて行く。

 そして、魔力へと還元される際、その変化にその体が馴染んでいなければ、その部位は魔力へと還元され、ぽっかりと穴が空いてしまう。


 ──定着していたからと言って、長生きできる例も殆ど無いが……。




 だからこそ、正しく悪魔の所業。



 だからこそ、魔の力。



 だからこそ、魔の使い。





 魔法使いは迫害されている。



 魔法使いと看做されれば殺される。



 止めてはならない。



 諦めてはならない。



 世界が壊されないためにも






 

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