第27話 有毒植物の話

 有毒植物といわれてまず思い浮かぶのは「トリカブト」ではないか。松本清張のミステリーなどで見た人も多いだろう。トリカブトは登山をするとしばしば見かける。根に毒があるらしいが、花は美しく根をもっていこうとする人はまず居ない。手が荒れるということで有名なのは漆である。現代人で漆にかぶれたというのは聞かないが、昔の子供は森の中を走り回っているうちに触ってしまいかぶれるということがあったようである。

 あるマンション現場を担当していた時に、近隣住民から外構植栽について質問が来たことがあった。道路の際に有毒植物を植えたりしないでしょうね、ということだったのだが、調べてみると有毒植物というのは身近にいっぱいあることが分かった。

スズランや馬酔木に毒が含まれているなんて聞いたことの無い人がほとんどだろう。皆、美しく鑑賞している。

 外構では使用されないが、朝顔やクワズイモなども有毒だという。野に咲く水仙もハナニラも有毒とある。ではどのように有毒なのだろうか?触ると手が荒れるものもある。食べると腹をこわすものもある。要するに黙って鑑賞しろということのようだが、植え替えをするときなどには注意すべきだ。

 さて、マンションの近隣から質問が来たことは覚えているのだが、どう対処したかの記憶がない。自分が主体的に対応しなかったのだと思われる。マンションの発注者が直接説明して了解をもらったのかもしれない。20年前のことではあるものの、自分が考えて対処したものは年がたっても案外覚えているものだからだ。実際には有毒といわれる樹木もいくらか植えたような気がするが定かでない。

 余計なことを思い出してしまったので、言ってしまおう。当時発注者はデベロッパーだったのだが、樹木に樹名板を付けてほしいと言われた。サービス話し方だったので話し方だったので紙に印刷してパウチっこをして樹木に取り付けたのだが、努力むなしく金を出すので既製品の無名表にしてくれと言ってきた。我々の作業はボランティアである。これは些細なことだが、こういったところにもでベロパーによるカスハラは存在していた。

 もう一つ余計なことを言ってしまおう。このマンションは世田谷の一等地に建っているのだが、最上階が億ションだった。私の感覚ではマンションの仕様としては中の下くらいで、特徴といえばリビングと廊下の間の扉が少々高級だったくらいである。億ションは面積こそ広いけれども仕様が高級なこともなく、建設していても全く魅力を感じなかった。ピザに例えれば、Mサイズより大きいからLサイズは値段が高いよ、といった感じか。

 マンションは青田買いである。実際に物が完成してから購入するのではなく、完成する前に購入するのが一般的だ。このシステムを作った人にお会いしたことがあるのだが、その話は別の機会にしよう。案じる通り、その億ションを青田買いで購入する人はおらず竣工してもしばらく売れなかった。結果、数か月して億ションではなくなってしまった。販売価格を億を切る価格に値下げして初めて売れたのだった。仕様はそっちのけにして、近隣のマンションの価格とだけ比較して販売価格を決めた結果だと思う。デベロッパーとしては経験不足だったと言ったら当時の担当者に怒られるだろうか?しかし、億ションといいうのは販売する方もプライドを持って提供するものではないのか?売れないから1000万円単位で値引きするのは如何なものか?すでに購入している下階の人たちが知ったらきっと不愉快だよな、などと考えてしまう私だが、素人は黙っていろと言われるのかな?

 脱線が多かったが、植物の話に戻ろう。我が家は割と広いバルコニーがあるのでプランターでいろいろなものを育てている。一番長寿なのは金の生る木だ。コガネムシの幼虫に根を食われ、瀕死だったこともあるが生き返った。丈夫なのだ。どんどん成長するので挿し木すると、まず失敗なく子孫が増える。職場の仲間に譲ったものも10本ではきかない。一年しか持たないが、毎年唐辛子を育てている。鷹の爪だ。実を乾燥させて粉末にするのだが、一度これを食べたら市販のものは食べられなくなるほどうまい。香りが良くて辛い。唐辛子を植えておくと外注が来にくいといわれるが、実感はない。ただ、唐辛子に虫がついたことは無い。

 家の中は妻が緑化している。日陰でも育ちそうなものを数種類育てっているのだが、その中にクワズイモがある。この文章を書く前に有毒植物とググってみたのだが、なんとクワズイモが入っているではないか。食べたりすることは無いが、妻は手で触って手入れをしている。幸い手が荒れたりすることはいまだ無い。もう数年育てているから、食べない限りは大丈夫ということか?

 そう考えると「有毒」とひとくくりにすること自体が植物に失礼な気がする。前回書いた「汚染土壌」も同じかもしれない。コカ・コーラだって業務スーパーの安売り食パンだって発がん性物質が入っていると言われたことがあるが販売は継続している。発がん性物質を微量含んではいるが、普通に摂取しているだけでは問題ないということだと思う。薬にだってごく微量の毒物が入っていると聞く。であれば、植物だって土壌だって毒性の度合いによって呼び方を変えるなどして、危険度がわかるようにした方がよいと思うがどうだろう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る