高飛車なお嬢様がオレに執着してくる

烏目 ヒツキ

お嬢様

お嬢様の裏側

 オレは、大塚おおつかゴロウ。

 40歳過ぎの、しがないオッサンだ。

 見た目は、ツルツルの禿げ上がった頭にデブ体型が特徴。


 捨てたかった貞操は、この歳になるまで持ち越し、現在は聖人コース(貞操観念だけ)まっしぐらである。


 普段は便利屋の仕事で、庭の木を切ったり、草をむしったり、庭師のような仕事をしてる。専門職の人と違って、オレの場合はどちらかというと、日曜大工のような簡単な仕事だ。


 仕事をしながら、毎日の楽しみは昔のアニメ作品を見ること。

 あとは、友達と酒を飲んで、くだらない話をすることか。

 自警団としての活動もやっているため、朝と夕方は子供たちの見送り。


 それなりに充実した生活だった。――のだが。


「パパぁ……っ」


 オレは現在、金髪の美少女に添い寝をされている。

 いや、正確ではないな。

 寝ていたら、布団に潜りこんできた金髪の美少女に抱き着かれ、ぬいぐるみのように抱き着かれているのだ。


 相手は17歳。

 手を出したら、一発でアウト。


「リヴァね。生徒会長に選ばれたんだよ。えへへ。偉いでしょ」


 寝たふりを決行する。

 ハッキリ言って、この子は普段こんな子じゃない。

 想像以上に冷たく、最悪のレベルでオレを貶めてくる女の子だ。

 だけど、雇い主だから何も言えず、日々我慢を重ねて、仕事に没頭していた。


 カチャ。


 小さな物音が入口の方から聞こえた。

 ドアの方に目だけを向ける。


「じ~~~~~~~」


 眉間に濃い皺を寄せたメイドさんが、オレの方を睨みつけていた。

 ドアの隙間から見えた目には、殺意が宿っている。

 ちなみに、窓から差し込んだ薄い明かりのおかげで、薄っすらとメイドさんの姿が見えている。


 薄暗い所で見てくるだけ、というのは何とも気味が悪い。

 怖すぎた。


「パ~パっ」


 胸を撫でられ、頬を擦り付けられ、オレは息を止める。

 顎の下にサラサラとした髪の毛の感触がある。

 甘ったるい声で抱き着いてくるお嬢様のせいで、オレは生きた心地がしなかった。


 どうして、こんな事になったのか。

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