第35話 夢かうつつか

――痛い。




「ダメです。青空さんのバイタルサインが安定しません」


「しっかりするのよ、ヒマリっ! 戻ってきなさいっ」




――寒い。でも熱い。




「桐生院先生! 青空日鞠さんのモニター、体温、血圧、脈拍が正常値に戻りつつあります」


「状態安定後、すぐに採血する。準備をっ」




――苦しい。




「先生。青空さんの血液から血清を作製しました」


「まずはその血清とサクの毒素の混合液をマウスに注射するわ。それでもしマウスが中毒症状を発症しなければ……」




――暗くて、何も見えない。




「三時間経過。マウス、無症状……! 血中の抗毒素、有効です!」


「大至急、血清を患者へ投与するっ」




――怖い。




『帰るぞ、日鞠』







眼裏で、闇夜を流れ星が横切っていく――。

目を開ける寸前、日鞠はそんな夢を見た気がした。

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