第24話

いよいよ試験当日を迎え、不安と緊張の中で会場へと行く。

ここまでの勉強の成果を精一杯に振り絞り答案を埋めていく。


試験が終わり、体の力がスッと抜けていくのが全身で分かった。

「よし」その言葉通り中々の出来だったと自分でもわかる。

帰路に何気なくいつものカフェに1人でより、いつもの席に案内をされる。

1人で来るのは初めてで3人だった空間に1人で座るのはどこか寂しくやけに広く感じた。

店員さんに注文をした後にふと口から出た言葉に自分でも驚く。

「優香ってどんな子でしたか」

今まで何度か和馬と2人でこのカフェには足を運んでいたが一度も聞いた事がなかった。

優香について知りたい。そう思っていながらなぜ聞かなかったのかと自分に呆れながらも店員さんの答えを待つ。


「とにかく明るい子だったよ。」

「そうですよね。」

いつも通りの答えかと少しの安心と口に出したことへの後悔を感じていると

「でも、」

続きがある事に驚き再度目を見開いて店員さんを見つめる。

「あまり家庭環境は良くなかったみたい。」

その言葉にやはりと思いながらも、自然と言葉を続けていた。

「どうしてですか?」

「何度か泣きながらバイトに来た事があったんだよ。その度に早く家を出たいって言っていたかな。特にここ一年くらいはそれが多かったように感じるよ。」

「そうなんですか。家で何があったかは言ってませんでしたか?」

「そこまではわからないよ。でも、優香ちゃんからは君たちには言わないで欲しいって言われてたんだ。だから優香ちゃんに怒られちゃうかもしれないね」

そう言って店員さんは仕事へと戻る。

知らなかった。一緒にいてもそんな様子は一度も見た事がなかったし、バイト先に泣きながら行くなんてきっとよっぽどの事があったんだろうと思う。

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