第23話

和馬の引退試合を見た後の2人で行ったカフェで僕は初めて優香に強く言葉を発せられた。

あの時優香は何かを言おうとしながら言うのをやめた気がしたことを思い出す。確かあの時は優香に対して羨ましいと言った事を強く否定された。それにあの時優香は早く家を出たい。私の人生なのに。そんなことを言っていた気がする。


あの時何を言おうとしたのかよりも、なぜ言わせてあげる事ができなかったのか。その後悔が今になって押し寄せてくる。

僕はいつもそうだ。相手の言いたいこと、相手が汲み取ってほしい事をまるで理解しない。

理解できる人になりたい。その思いから僕は口にしていた。


「それでも僕は優香だけじゃなくて人の気持ちがわかる人になりたい。わかって支えられるような人に。」

「しずくがそう思うならそれで良いと思う。頑張りなね。」


それから僕は目的ができた事で勉強も捗るようになっていった。

和馬は野球で大学が決まったらしく、これからも野球を続けていくらしい。

たまに一緒にカフェに行って勉強に付き合ってくれる事もあった。

一緒にいる時は自然と優香の話をする事もあったが、優香の生活やなぜ死んだのか、そう言った事にはお互い触れずに過ごしていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る