第22話
それから優香のことを思い返していく中でいくつかの疑問が生まれた。
なぜ受験生だというのにあんなにもバイトに打ち込んでいたのか。
国立を目指すのであればなおのこと、勉強にもっと時間を使っても良かったのではないか。
優香はバイトばかりにしては成績も良かったし、授業中に寝ているところも見たことがなかった。
そんな優香だから将来の夢を叶えられると思っていたし、叶えてほしいと思っていた。
不思議なことと言えば服装についてだ、優香はいつも長袖を着ていた。和馬の応援に行った時も暑い日だったというのに優香はいつも通り長袖を着ていた。
日焼けしたくないと言われれば今時の高校生らしくて普通かもしれないけれど。
でも優香のそれは異常なほどのこだわりで学校にいる時も長袖のシャツを着ていることしか見たことがなかった。
優香は肌を見られるのが好きじゃないと言っていたけど、もしかしたら何か見られたくないものがあったのかもしれない。
そんな疑問を持っても解消されることはなく、時間だけがただ過ぎていった。
それから僕は受験に向けて勉強を日々進めていく。
「しずく行きたい大学決まってるの?」
ふと姉ちゃんが言葉にした。
決まっていない訳ではないけれど、特に理由があって決めた訳ではなかった。
このまんま大した理由もなく進学をしていいのだろうか。僕はもっと意味を持って進学という大きな節目を迎えるべきなのではないだろうか。
受験生なら誰もが持つ当たり前の疑問を前にしながら、他の受験生とは違ったもう一つの理由があった。
優香のことをこんなにも知らなかった僕は、優香が目指していたカウンセラーのような人の心に寄り添いその人を知る仕事に就くべきなのではないだろうか。それが知らなかった僕が今できる一番な行いなのではないだろうか。
「今ちょっと迷ってる」
「なんで?」
そう聞かれて、優香のことや優香がなりたかったカウンセラーの事を伝える。カウンセラーになったらきっと優香の知らなかった部分を知れるんじゃないかと思っていることを伝える。
「良いと思うよ。でもさ、優香ちゃんはしずくに知って欲しかったのかな?知って欲しかったら言ってたんじゃないの?」
確かにその通りだ。言わなかったということは僕に知ってほしくなかったのかもしれない。そう思った時に一つの描写が思い返される。
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