第5話
鮎坂さんはコンビニで買ったおにぎりやサラダを食べている。
僕がこんなこと言って良いのかわからないけど、鮎坂さんはきっと可愛いと周りから言われるくらいに容姿が整っている。もっと身体に気を遣った食事を摂るのかと思いつい「いつもコンビニなの?」と聞いてしまう。
「そうだよ?コンビニが一番美味しいから〜」
と自慢げに返ってきたのでそのまま「いつもは誰かと一緒に食べてるの?」と聞く。
「いや、2年生の途中くらいまではみんなで食べてたけど喧嘩してから1人なんだよねーほら、友達いないって言ったでしょ?」と笑い混じりに行った鮎坂さんを見ながら何気なく聞いてしまった事に反省をする。
「そうなんだ」と最初から興味がなかったかのように答え話を切り上げる。
それからは進藤くんが入っている野球部の話や受験の話をして昼休みを終えるチャイムが鳴る。
進藤くんは野球部のレギュラーで小さい頃からずっと野球をやっていてこの高校にも野球推薦で入ってきたらしい。
進学校で野球もそこそこ強い僕の高校でレギュラーでまさに文武両道といった感じだった。
それから僕たち3人は日を重ねるごとに仲良くなり、気付けばお昼を一緒に食べる事も当たり前になっていった。
進藤くんがお昼休み空いていれば3人で食べる事もあり、それ以外の日は変わらずそれぞれの机にお昼を広げて鮎坂さんと一緒に食べることが多かった。
相変わらず鮎川さんはコンビニのおにぎりを食べていて相変わらず嬉しそうによく喋ってくれる。
進藤くんの部活が忙しくて2人で食べる事が多く徐々に会話の中にあった不自然さもなくなり色々な話をする様になった。
鮎川さんのバイト先の話や、見たいと思っている映画があること、そんな話をしながら気が付けば一緒にいる事が当たり前になっていた。
確かに周りから見れば異様に映ったのかもしれない、明るく容姿の整った鮎坂さんと僕なんかが一緒にお昼を食べているのを見ていたクラスメイトの中で「2人が付き合っている」「海瀬は本当は女子」そんな噂や陰口が広まっていった。
薄々そんな事を言われているという事は気付いていたが、僕も鮎坂さんも気にせずお昼を食べているところにクラスの男子が何人か来て、
「お前らって付き合ってんの?」と聞いてきた。
「なわけないじゃんー!」といつもの様子で鮎坂さんが答えると「じゃあさ海瀬って本当は、、」とニヤけながら聞いてくる。
僕が少し戸惑いながらも違うよと言おうとするがそれより先に「やめてよただ仲良いだけだから」と少し怒った様子で鮎坂さんが答える。
男子が「すみませーん」と言って戻っていくのを見ながら、鮎坂さんが初めてこんな表情をしたことやこんな事で怒っている事に驚きを隠せずにいた。
「あ、ごめんね。なんか何も知らないのに陰で言われたりするのが嫌いなの。」
「勝手な解釈で楽しい事とか幸せな事を壊されたり、傷を抉られたりそういうのが許せないんだ。」
と言いながら机にあったジュースを飲む鮎坂さんを見てどこか安心しながら僕も自分のジュースを飲む。
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