第3話
新型コロナウイルスの拡大で日常生活はマスクをして過ごす高校2年間だったこともあり、マスクの下の顔をはっきりと知らない子は少なくなかった。最近になってやっと緩和され、マスクをしながらの外出も許されているくらいだ。
今日鮎坂さんに話しかけられた時もお互いにマスクをしていたし、それが当たり前になっていたからあの10分にも満たない時間の中でマスクの下はどんな顔なのか、どんな表情で今話しているのか、そんなことは気にもならなかった。
僕にとってはマスクをつけなきゃいけない毎日もそうじゃない毎日もどちらでもよくて、なんとなく過ごす日々であることに変わりはなかった。
変わりのなかった日々も受験がある今年はそうもいかない。
別に行きたい大学もなければ、将来やりたい事があるわけでもない。ないことはないけどないに等しい。
ふとスマホに視線を戻すと通知が増えている。母からだ。
脱衣所に向かう途中の廊下で姉ちゃんとすれ違う。
「おかえりしずくちゃん!」
「ただいま」
いつも通りの噛み合わないテンションで安心すら覚えながら脱衣所へ向かう。
姉ちゃんは二つ上で今は絶賛大学生を満喫している。僕とは違って常にグループの中心にいるような、明るくて誰からも好まれる人だ。
姉ちゃんとは昔から仲が良くて基本喋ってるのは姉ちゃんだけど、なにかと僕を守ってくれる存在だった。
姉の後ろにくっついてばかりだったから今の僕はこんなに内気なのではないかと思うほどに対照的な存在で羨ましくすら思う。
風呂から上がり食卓で食事を摂る。僕の家は昔から食事は家族みんなで食べるのが当たり前になっていた。
小さい頃は食べ方や箸の持ち方なんかを注意された覚えもあるけど、今となっては何を言われるわけでもなく姉ちゃんに関しては食べながらスマホをいじるときてる。
でもこれが普通と言われれば普通だなと思うそんな家庭だなと思う。
食事を終えて自室へと戻り再度スマホを開くと鮎坂さんからLINEの友達申請がありメッセージが来ている。
「前の席の優香だよ!!
しずくくんこれからよろしくね〜」
こちらこそよろしくね
素っ気なく思われてしまうかなとも思ったが、僕はいつもこうだ。と思いながら返信をする。
わざとらしく名前がメッセージの中にある事が気になるがきっとちゃんとひらがなって覚えたよとでも思っているのだろうなと思うことにする。
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