新しいおうち
たい焼き。
ここが新しいおうちかニャ
「ミーコ、新しい爪とぎと猫ベッドを買ってきたよ〜。気に入ってくれるかなぁ〜」
少し前からあたしの新しい召使いとして家に来だしたウチムラが、あたしへの忠誠心を示すためにいろいろな供物を用意したみたいね。
ウチムラが抱えていた段ボールからそれぞれ中身を出して設置している。
一つはまん丸で上の部分がへこんでいる。
恐る恐るちょんちょんとつついてみると、適度に爪にひっかかり気持ちいい。 へこんでいる部分もあたしの体にフィットするようになっていて、ちょうどいい。
あたしがチェックしている間にウチムラが箱からもう一つ、今度は屋根がついたものを取り出していたのでそちらもチェックに向かう。
あたしが近づいていくのに気づいたウチムラがとろけたようなだらしないような顔になって、あたしの頭に手を伸ばしてくる。
あたしはウチムラがあたしを撫でやすいように、頭を少し上に伸ばしてあげる。
ウチムラの手は気持ちいい。
さらっと頭を撫でさせたあとに、屋根付きの部屋に行って早速チェックする。
さっきのと違って今度はふわふわとしていて、前足でギュッと握るとそれに合わせてふわふわしたまま握れて気持ちいい。
ゆっくりと中に入るとどうやら床一面がこのふわふわになっていて、フミフミしているととても安心できる。
壁際は下の方は床と同じふわふわになっているけど、上の方は少しかたい。でも、屋根のおかげで中に光が入らないのでそこは高評価だわね。
でも、何だか……匂いが慣れない。
フンフンとチェックしていくあたしの姿を見てウチムラは満足したのか、段ボール以外の荷物も片付けて始めた。
あたしも簡単なチェックを終えたので、グーッとひとつ伸びをして全体のパトロールへ向かう。
新しいものが入ったせいで、他のものに影響は出ていないかどうか、ウチムラが来たときに他に不審なものや変なものを一緒に入れていないかもチェックする。
……あぁ、そういえばこっちはチェックしてなかったわね。
あたしとしたことが、ウチムラの持っていたものそれぞれはチェックしたけど、それが入っていた段ボールの方はノーチェックだったわ。
あたしは早速空っぽで放っておかれている段ボールを2つともチェックする。
出入り口は上からの一箇所。中は
これは……いい……。
「ミーコ〜、ご飯用意できたよー。……ミーコ〜……? どこだーい?」
トタトタとウチムラの足音が近づいてくる。
「ミー……あ、いた。……あー、これは……猫飼いあるあるのやつだ……」
ウチムラが何か言いながらガサゴソと何かしている。
少しすると、パシャッ、カシャッと音がする。
うっさいにゃー……。
ウチムラが何かをこちらに向けて絶えずパシャパシャと音を立てているので、嫌だと意思表示をするように顔を腕の下に潜らせる。
「うわーまんまるだ〜、可愛いねぇ〜」
しばらく、パシャパシャしていたけど音がやんだと思ったらウチムラが身体全体を撫でてくる。
「にゃんこが買ってきたベッドよりもそれが入ってた段ボールを気に入ってそっちに入っている、ってよくSNSでは見てたけど……本当なんだね〜」
うん。この狭さはとっても安心するわね。
「できれば、新しく買った猫ベッドと爪とぎも使ってね」
「んなー」
気が向いたらね。
でも、しばらくはこっちの箱を愛用しますわね。
そんなことを返事しようとしたら、箱が与えてくれる安心感に負けて夢の世界へ誘われてしまった。
新しいおうち たい焼き。 @natsu8u
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます