第六話 現代のイフリート(後編)
岩手県平泉、世界遺産登録された寺社。
以前聞いたことがある。
何らかの非生物
常駐する職員は獣化を可能とする血族や沙苗と同じ
だからこそ俺達も、最初に襲撃を受けた際ここへ逃げ込もうとしていた!
現代日本のイフリート……モエウシの目的は何だ!?
進路はおそらく、件の寺社施設と予想されている!
「谷丸はそのまま、上空から偵察!佐原は第二種部隊と合流!」
『謙一先輩、了解ですっ!』
『了解! 谷丸ちゃん、カナヤ君、何かあったらすぐに通信で知らせて!』
「アタシとカナヤさんは車で待機っすね!」
今回の沙苗はひたすら
モエウシ無効化任務は、沙苗にかかっている!
*
県道から侵攻するモエウシ、
が、モエウシ……これを無視!
捕食でもない、戦闘を求めるタイプでもない、徘徊型とも異なり、無闇に攻撃行動はとらないように見える。
発話や意思疎通は不可能と断定されていた。
それでも俺は、奴に何らかの知性や行動動機があるように感じる。
何を目指し、歩を進める!?
『空から見てますけど止まりませんね、謙一先輩!』
『カナヤ君、私は金剛院付近に到着!』
「場所、ほんとにここでいいっすか!? カナヤさん! まだギリギリ、変えれるっすよ!」
「三人とも、今のままだ!」
モエウシは県道から道路を一直線に進み、一つ目、二つ目と大型駐車場を通過!
本堂付近に差し掛かった辺りから、周囲に炎を撒き散らし始める!
多くの関連施設が立ち並ぶ寺社群、横に延びる道路を西へ西へと闊歩するモエウシ。
『やっぱりこれ、謙一先輩の予想通り金色堂に向かってます!』
『カナヤ君、迎え撃たなくて大丈夫?』
「構築は八割! でも、ほんとに成功するんすか!?」
「佐原は待機だ! 沙苗は世界の、各国で確認された事例と資料を信じろ!」
谷丸、佐原それぞれからの通信。
俺と沙苗は車内で……仕上げに入る!
モエウシはひたすら西へ突き進んでいる!
『謙一先輩、三つ目の駐車場越えましたっ!』
『ここからは、私達が!』
「後は正確な数字と微調整だけっす、カナヤさん!」
「開幕だ、押し留めろッ! 佐原!」
俺がいる車窓からも、もう見える! 県道からおよそ一キロメートルの距離に位置する金剛院と讃衡蔵が、モエウシの炎を伴う衝撃波により半壊、炎上!
佐原をはじめとする治癒能力と超常膂力を持つ防壁部隊が……食い止める!
俺は連絡と、再計算!
「こちらカナヤ管理官、キネト編成は!?」
『三百五十人、問題はございません!』
通信機から返ってくる抗キネト職員の声。
「聞こえたか沙苗、準備だ!」
「りょうかいっす!」
岩手を訪れる前に、俺達が〝世界〟から授けられた
監獄の攻略時、沙苗が覚醒した
同じ発動事例が他国で二名、計九回確認され「中断や妨げを受け付けない」という新事実が発覚していた!
一度構築すれば本人の手ですら変更が効かない、代わりに物理干渉や現実改変までをも
それが、強固な
遠野対策機関本部や各国重要拠点は、キネト力学を修めた職員を多数配備している。
目的は認識阻害を使った民間人からの隠蔽や、有事の際のキネト防衛。
交替制職員達の主導により米国で行われた実験の結果、キネト
そこで、遠野市の本部から集めた特殊職員達による圧倒的な上昇効果を狙う!!
「組み合わせはぶっつけ本番だが、やるしかない!」
「カナヤさん、任せるっすよ!」
『キネト編成隊、準備は完了しております!』
俺は計算、微調整、再計算!
上昇量を計算した上での「事前構築」で力をより一層、強固なものにする!
「土壇場で悪い、キネト
「多けりゃいいってもんでもないすからね! わかるっす!」
『上昇キネト総量の最終値は、いかがなさいますか!?』
整 い つ つ あ る !
「沙苗、威力方角距離深度全て変更なし!五分だ!値はキネト
「開始! 葵姐さんも……頼むっすよ!」
『『キネト
*
延焼した建造物への消化作業と並行し、第二種達による力技、ゴリ押しが続く!
設定された
封じ込めろ!!
駐車場に!!!
「間に合うか!?佐原ぁ!」
『最後は……私がッ!』
持ち上げた! さすが、佐原だ!
他の第二種職員達も加勢し、支える!
「投げろおおおおおおおッ!佐原ああああ!」
『入れええええええ!』
燃えては交代、再生を繰り返す防壁部隊に混ざり力を温存していた佐原が、身の
「ゼロ! はじまるっすよカナヤさん!」
投げ込まれたモエウシを駐車場表面のアスファルトが、その下の土が、岩盤が、包む!
衝突、激突、圧縮!
圧縮、圧縮、圧縮、圧縮、圧縮!!
ただの
総勢三百七名のキネト
妨げることを徹底阻止する
「杉山陸佐! 海岸に向かって飛んでくっすよ!」
『こちら杉山! 海上自衛隊から通達、目標を確認!』
極限まで土と岩で押し潰されたモエウシは、もう燃えることなどできない。
そして、飛ばす!
東北東およそ百キロメートル強の地点!
水深は
太平洋で潰れろ、モエウシ!!!
『こちら杉山、観測中の高温エネルギー反応消滅を確認! 実体そのものはソナーに反応あり!』
「やったっすねカナヤさん!」
「こちら金谷、回収及び解体任務の開始を!」
モエウシ、無効化完了!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます