第3話

 モニカには関係ない!


「いくのでつ! 大ぼうけんでつ!!」


 今日の冒険はそう、歴史のお勉強のなかで学んだ、ケルベロスの地下牢であった。


「ワックワクでつ!」


 モニカ、勉強嫌い。

 眠くなるだけの歴史の勉強なんて、目を開けていても子守唄にしか聞こえない。でも、魔獣ケルベロスの話は絵本にも読んでいた。


 ある日の講義で、絵本で見た、その大きなけものが地下に眠ると知った。

 モニカは目を輝かせた。

 それを家庭教師の老先生は見過ごしていたのである。


「おっきなもふもふたんとお話してみたいでつ! 毛皮にうもれてみたいのでつ!」


 厳重に封印された扉である。

 王家の紋章は封印のあかし。

 決して開けられることはない。

 まして、幼女の力でそんなものが……。


 開いた。


 あっさり。

 何故か。


「いくのでつ!」


 扉に招かれているようだが、何故? どうして?

 モニカには関係ないか。


 地下深くへと延びる階段。

 真っ暗闇である。


「用意はありまつ!」


 モニカ、常に独り言である。幼女ゆえに。怖さを紛らわそうというのでもない。それが幼女なのである!

 ニコニコ笑顔で取り出したのは、魔法のランタンであった。

 モニカ自体には魔力など微かもないのだが、魔法の道具は誰にでも扱える。

 危ないと、幼いモニカから遠ざけられているものは多いが、火も出ない魔法のランタンであればむしろ安全と、常夜灯代わりにもモニカの寝室にも備えられているのである。

 それを持ち出したのだ。


「ドッキドキでつ。ケルゥベロチュ……、ケリュベロ……、ケロベベレレレ……っ! ケ、ケ、ケ、ケロケロ……、キャハハハ、カエルたんでつ」


 モニカ、自身の舌足らずを自分で大笑い。


「ケルスでいいでつ! いま会いにいくでつ!」


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