第30話 衝撃の真相
~~「白夜」アジト~~
樹海の中を三日間駆け回った俺はへとへとに疲れてアジトに戻ってきた。
とりあえずはクリアできて良かった・・・
ミッションをクリアできた安堵感と疲労が押し寄せて
今にも深い眠りに落ちそうだったが、あっちゃんが先にアジトにもどり
お祝いの準備をするって、張り切っていたので眠るわけにはいかなかった。
「翔ちゃん、クリアおめでとう。デリシャスパーチーだよぉ」
「あ、ありがとうございます・・・」
正直翔矢はこういう大勢の人に祝福されるということにあまり慣れてなかった。
「白夜」の皆がおめでとうと、乾杯してくれる。
「俺は捕まらなかったけどなぁ!まぁ俺様を捕まえるには100万年まだ早いな!」
白雷さんがどや顔でお疲れっと言ってビールを次いでくれる。
それをたしなめるようにガイさんが言った。
「でもある意味白を捕まえるより、あっちゃんを捕まえる方が難しいかもしれん。逃げる方は攻撃しないという前提でなら。」
「ハクちゃんは、いつでも全力だからね、でもあちしも手は抜いてなかったよぉ?ジャンプでぴょんぴょんしまくってたし、まぁひっさちゅわざは使わなかったけど。」
「あれは初見で食らったら死ぬぞ、アハハハ」
「白夜」のみんなはホントに強い。そして暖かい。
翔矢はしみじみとこんな人たちと仲間になれて良かったと心から思った。
あっちゃんは、独特の世界観でとっつきにくいところがあるけれど、
実はすごい仲間思いで、皆の世話をよくしてくれる面倒見のいいことを知った。
あっちゃんがよく使うフレーズにデリシャスパーチーが出てくるが、
なんでそんなにパーチーが好きなのって聞いたことがあった。
あっちゃんはこう答えた。
「誰からもお祝いしてもらえないことは、かなしぃ事だけどぉ、もっと悲しいのは、お祝いする仲間がだれもいない事なんだよぉ・・・だからあちしは、だれかのためにデリシャスパーチーするときはぜんりょくなのだぁ!」
たしかに一人は寂しくつらい。それを誰よりも知ってるあっちゃんだからこそのあっちゃんワールドなのだろう。
そうやって皆に料理を取り分けたりお酒を注いだりしてるして楽しんでるあっちゃんを眺めてたら目が合った。
「あー翔ちゃん、あちしにキュンキュンしちゃったぁ?」
「・・・・・」
「でもあちしは「白夜」のアイドルだから、ひとり占めはだめだよぉ?」
当初はたまにイラっとするときもあったけど、今は笑いしかでないなぁ・・・
あの白雷さんでさえ、あっちゃんを邪慳に扱わないのは、それをわかってるからだろうなぁ。
いい仲間だ。
ここでなら俺ももっと強くなれそうだ。
そして「白夜」の仲間のために役にたてるように。
まだ今は小さな光かもしれないけれど・・・
そうやってしんみりと皆を眺めていると
ガイさんが少し外の空気を吸おうかと声をかけてくれた。
ひんやりと湿った風が火照った体に気持ちよく月の綺麗な夜空だった。
「今回のミッションはどうだったか?何か得るものはあったか?。」
「はいたくさんありましたけど、気配の探り方と消し方ですかね。」
「上出来だ。」
そういうとポンと優しく肩を叩いてくれた。
「俺はまだまだですね・・・」
「今はそれでいいんだ。入った当初に比べれば格段に強くなってるし、今は経験を積む時だ。」
強くなってる自覚はある。
が、しかしここの仲間と比べてしまうとまだまだだと思う自分がいる。
「どうだ、経験がてらうちと付き合いの組織に出向いてみるか?」
「おもしろそうですね」
「うちの新人の顔見せとあちらさんにも新人が入ったと聞くし、交流戦でもどうかなっと。」
「戦うんですか!?」
「まぁ、軽く手合わせ程度にな。」
「そういう事ならお願いします。」
暫くして、部屋に戻るとさっそくあっちゃんが、せっかくのパーティーしてあげてるのにどこ行ってたと絡んでくるのをうまく受けながしつつ、機嫌を取って飲みなおした。
久しぶりに飲んだせいか、疲れのせいか酔っぱらって気持ちよくなっていつの間にか俺は、眠りについていた。
他の組織の異能者かぁ・・・どんな能力でどんな人たちなんだろうなぁ・・・
~~~次の日~~
俺は、この世界で住むところもないので、【白夜】本拠地施設の一室を自室として割り当てられているベッドの上で目を覚ました。休憩と待機室を兼ねている20畳程あるリビングの様な皆が集まる場所に顔を出すとじっちゃんがもう居てコーヒーを飲んでいた。
「おはよう。じっちゃん。」
「おはよう。 翔よ、ここではマスターじゃぞ。」
俺はなんだかそう呼ぶのが照れくさくて、ぺこりと頭を下げ頬をかいた。
じっちゃんは、まぁそれは追々で、今日は少し話があるとの事で少し神妙な表情になった。
「そろそろ頃合いじゃろ。これからわしの力についてと、この世界の真実を話す。」
「なによ急に改まって・・・じっちゃん」
この時、翔矢はじっちゃんのいつになく真剣な表情に、期待と不安の入り混じったものが湧き上がるのを感じた。
「翔矢よ、シンクロニシティという言葉を聞いたことあるか?」
「別々の場所で、同じ現象が起こる事?であってる?」
「そうじゃな。賢いな。次にデジャブという言葉を聞いたことがあるか?。」
「過去に体験した出来事が重なる現象?かな?」
「うむ、次に未来視。」
この時翔矢は、ドキリとした。最近自分の身に起こっている事。時々見る嫌な夢。
それらが、一瞬の脳裏にチラつき、いったいこの先何が知らされるのか・・・
「最近なんかやけにリアルな嫌な夢を見るんだけど・・・」
「そうか、もうその域に達してきたか・・・まずはわしの力について詳しく話すから落ち着いて聞くのじゃ。」
翔矢は、これから話される事の大きさを感じ取りコクコクと頷くのがやっとで、息をするのも忘れそうだった。
「この言葉はわしが名付けたものじゃが
それからじっちゃんは、翔矢が理解できるようにゆっくりと優しい声で説明し始めた。
森羅万象根幹叡智
全ての生き物は、そこから叡智の根幹を授かっている。
またそこから情報を得て行動原理として活動している。
これによりシンクロやデジャブといった現象が起こる事をゆっくりとわかりやすく説明してくれた。
普段人はそこから行動原理となる情報を得て、行動している事すら自覚していない。ゆえにたまたま別の場所で全く同じ現象や行動を起こす事があるのだと言う。
デジャブもその類で一度受け取った情報をまれに再度受け取った瞬間に、一瞬違和感を感じるのだという。
それに意識してアクセスできる者が居ると言う。
「わしは、人を通じてその者がどういった能力をその叡智より授かっておるか見れるのじゃ。
そしてそれをわしの行動原理と置き換えて自身もその技を行使することができるのじゃ。」
しかし、アクセスして読み取るだけでその情報を変えたりはできない。
もしできるとすればお前の能力。タイムアクセルで時も時空も飛び越える事が可能かも知れないと。そしてそのじっちゃんの力は俺にも受け継がれていると・・・
「さっきから、呆けた顔して聞いとるが、何か思い当たる節があるんじゃろ?」
眼から鱗どころではない。じっちゃんが神様に思えてきた。
「じっちゃんは・・・・神様・・・?」
「ふははは、わしは、わしじゃ・・・それにもうそんなに長くはない。」
「えっ!?」
「あぁ 誤解するなよ、すぐにドウコウの話ではなくお前より残された時間は少ないと言う事じゃ。」
こんな世界観がガラガラと音を立てて変わるような衝撃の真相を聞かされたものだから、翔矢はじっちゃんがまたすぐに居なくなるかという不安が急によぎった。
「そのしんらばんしょう・・っていうのには未来の情報も?」
「うむ、だがそれにアクセスするには、翔矢にはもっと修行が必要じゃな。わしとてそんなに遠い未来の情報にはアクセスできん。」
じっちゃんの言うにはその森羅万象根幹叡智には、すごい情報量が渦巻いていてそこにアクセスするだけでも物凄い力を消費するという。その中から未来の情報を探し出すだけでも至難の業で、よくて数日先が一瞬見えるという。じっちゃんの推測では恐らくその情報(未来の物も含めて)を書き換えたりは出来ないとの事。だが何らかの要因で追加や変更されたり事はあると言う。
「翔矢も気づいたと思うがこの世界は変わっておるじゃろ?」
「変わってるどころじゃないよ完全に狂ってるよ。」
「だがこの世界の者は、狂って無いじゃろ?。この世界の森羅万象根幹叡智が狂っとるのじゃ。」
「そっか!それが当たり前でなんの疑問も感じなくなるって事か!」
「やはりお前は賢いのぅ。儂ら異世界の者はこの世界の理から半身飛び出しておる。」
じっちゃんの説明により翔矢は全ての合点がきっちりとハマる気がした。そして当時感じてた違和感。それが翔矢自身も薄れて行っている事もその森羅万象根幹叡智によるもので、その世界の理に染まって行くのだと言う。
そしてこの異能力もこの世界の森羅万象根幹叡智に付け加えられた物で、ある時からそれこそシンクロニシティのように至る所で力を覚醒させる者が出たという。じっちゃんの推測ではこの世界の全ての者は異能力を根幹に持っているという。それを覚醒させるのは人それぞれの何らかのタイミングであり、覚醒させないまま終わる人が大半であろうとの事だった。
そして翔矢はどうしても気になっていた事をじっちゃんに聞いた。
「じっちゃんは、その・・・人を殺した事があるの?」
じっちゃんは暫く遠い目をして、それから目をつぶってゆっくりと頷いた。
「こっちに来たばかりの時は必死じゃった。今となっては数え切れないほどじゃ。」
そう言うとじっちゃんは、俺の一抹の不安を見抜くかのように語り始めた。
この世界の命は、元居た世界よりは、はるかに軽んじられる事。まだこちらに来たばかりの翔矢は、その命のやりとりまでは、体験する機会がなかったが、少し離れた所では、日常茶飯事の如く繰り広げられている所もあると言う事。そしてその時は、いつか必ず来るが、その時は躊躇するなとの事。
それは確かに俺が不安に思っていた事だった。
俺に本当に人が殺せるのか・・・
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