第29話 ミッションその2



 そして二日目の朝が来て、五感を研ぎ澄ませ気配を探りながらあっちゃんを見つけては、捕獲を試みるも、あっちゃんのジャンパーの能力で簡単に逃げられる。


そうあっちゃんのジャンパー能力は逃走においては右に出るものは無いくらい優秀なものだった。


なにせどの方向に逃走したのか逃げた方向が分からないので、消えるたびに気配を探索しなくてはならず、どうしても一歩遅れてしまい、捕まえるに至らない。


一回のジャンプ距離は50m程なので一度や二度までは、追跡できるが繰り返されると追跡不能だった。


 そして白雷を見つけて迎撃にあう・・・

このままでは何度やっても同じことの繰り返しで埒があかない・・・


一旦落ち着かせようと二人の気配からわざと遠ざかった。

そして捕獲する術を思慮するも、相手の気配察知能力の高さとやはり経験の差で、真っ当に当たっても捕獲は難しく思え何度イメージを巡らせても結果は同じ・・・


ならば・・・・


そして日も暮れて来て昨日は食事も取らずに眠ったのでさすがに、食料の捕獲をすることにした。

今の翔矢にとって食料の捕獲は難しくなく、難なく野兎をゲット。

水は湧水が沸いてる所をいくつか見つけていたのでそれを汲んで念のため煮沸して飲んだ。


「明日こそ決めよう・・・」

辺りに電灯もなく今宵は新月で真っ暗な樹海だが、

見上げれば一面に輝く星空が綺麗だった。

都会では見れないその星空を飽きることなく眺めながら、ふつふつと湧き上がる明日への期待へ夢馳せながらその日は眠ることにした。


 そして次の朝

冷えた静けさの残る清々しい朝の中、軽く準備運動をして辺りを探索開始。

一つの気配を察知それを無視するがごとく突き進みさらにもう一つの気配を察知。

これもスルーしてさらに奥に進む。


 一つ大きく深呼吸をして気を落ち着かせる。

おそらく二人は翔矢の気配には気づいてるはずだ。

軽くジャンプした後。

タイムアクセル発動

脚力超強化

一直線に気配を隠しもせず標的に突き進むその先は・・・


あっちゃん。

翔矢のあまりの速度に少し面食らった様子のあっちゃんは、

何やら声を上げながらジャンプで躱す


「いやぁー翔ちゃん、あちしにまっしぐら」


この頃になると翔矢はあっちゃんの癖を少しづつ見抜き始めていた。

この三日間何度も追い掛け回した相手だ。

あっちゃんの見る方向と姿勢とフェイント

追いかけながらも視力向上でよく視る。


獲物を追いかける肉食の猛獣の様に。

だが翔矢がそれとは違うところが一つ。

ある地点に向かうように追い立てていたのである。


昨日の日暮れに真っ当に追いかけては捕獲できないと判断し

あるところに罠を仕掛けた。

その一点に気づかれないように追い立てていないように

うまく誘導を試みる


あっちゃんも余裕の表情を崩さずジャンプする


「こっちだよぉ~」


(大丈夫これでいい・・・)


程なくしてジャンプした地点であっちゃんが何かを踏んだのに気づく

シュルシュルと音がした後に、吊るされた大木が

あっちゃんの眼前に迫る。

あっちゃんは余裕で気づいていたがびっくりした様子を醸し出す。


「わぁーつぶされる~」


翔矢もこれはブラフだと想定内なので、次なる行動に移る。


ひょいと避けておどけて見せたあっちゃんだったが・・・

その直後ドシーーンと吊られた木が大木に大きな音を立ててぶつかる。

その直後にバラバラ ドスドスと何やら石が音を立てて落ちてくる。


 そう翔矢はわざと石をぶつかるであろう大木にあちこち仕掛けていたのである。


その二つの仕掛けの音であっちゃんは翔矢の気配を見失っていた。


この頃、翔矢も完全に近いまでに気配を消せるようになっていた。

あっちゃんが少し辺りを探っていると、わずかに大木の木の上でゴソゴソと動く気配がした。


(はは~ん翔ちゃんもなかなかやるけど、おしかったねぇ・・)


あっちゃんは気づかないふりをして大木に近づく。


その全てが翔矢による大きな 布石わなだとも知らずに・・・


大木に背を預けながらあっちゃんは木の上をちらっと見た。


「おしかったね、そこにいるのはわかってるよぉ?」


その瞬間背後の枯草の中から翔矢が飛び出しあっちゃんを捕まえた。


「あっちゃん捕獲!」


「あれま、あちしつかまっちゃったよぉ!」


そう翔矢は二つの衝撃音の間に木の下に掘っておいた穴に身を潜め

大木の裏にツタを上に回し枝をひっかけセットしていたものを

あたかも上にいるように揺らしていたのである。


さすがのあっちゃもこの二重三重のトラップに引っかかってしまった。


「翔ちゃん、がんばったからデリシャスパーチーだねぇー」




 


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