第23話 獅子奮迅



 ~~~~~とある港~~~~


 深夜零時の港で、そこには人の気配はあるはずもなく冷えた静けさの風だけが吹いていた。

しばらく港を歩き進むと一つだけ明りのついた倉庫があった。

前には黒塗りの車が数台止まってた。


ータイムアクセル発動ー

最大限の警戒をしつつ、倉庫に近づく。

中には数人の男がいた。一人二人・・・8人か・・・

藤代という男はすぐわかった。

いかにも高そうなスーツで着飾っており、悪人の匂いがプンプンしそうな顔をしてるのがそうだろう。

俺は警戒しながらも会話の為に一旦技を解く。

「いわれた通り一人できたぞ。」

「お前が水城か・・・で、話とは?」

「あきなちゃんに二度と手をだすな。」

「野暮な奴だな、これは男と女の問題だろう?お前になんの関係がある」

「俺はあきなちゃんに雇われたボディーガードだ。」

「フン、まぁいい、そこの三人と闘ってお前が勝ったら考えてやろう。」

そしてがっちりとした体形の男と細身の刀を携えた男と小さな腰に鎖鎌の様なものを携えた男が前に出てきた。


男三人はゆっくりこちらに近づいてくる。よく観察する。どれからやるか・・・

まずは小柄な、すばしっこそうなのからだな・・・


ータイムアクセル発動ーMax

俺は今できる限りの能力を発動させる。


パーンと世界がゆっくりと動き出す。さらに全ての五感を研ぎ澄ませることに集中する。じっくりと間合いを計りながら重心を落とす。先に仕掛けてきそうなのがいたらそいつから潰す!


 この時自身で解放できるだけの最大限のタイムアクセルを発動したため、以前よりもかなりスローで翔矢の視界には映っていた。


相手との距離10m・・慎重に間合いを計る・・・


全神経を集中させる、鼓動が高鳴るのが分かる、そしてイメージする。

ネコ科の猛禽類のしなやかなバネの様な瞬発力を思い描きながらいつでも行ける態勢をとる。

いち早く反応を見せたのはやはり小柄な男だった。

相手との距離7mいけるか・・・小柄な男が武器に手をかけようと動いたのを見逃すはずもなく、翔矢から向かって左側の小柄な男に向って右足で大きく蹴りだす。

まだボディアクセルを自在に使いこなせてはいないが、一歩で間合いを詰めるには十分な脚力向上を果していた。


小柄な男は翔矢が眼前にまで迫っているのに反応すらできていない。

次に翔矢のイメージするのは巨大なハンマーを右拳に思い描き敵のボディに打ち込む。

ズシリと伝わった感触で手応え十分なことを確認しその横、真ん中の細身の男のレバー目掛けて左拳で渾身のレバーブローを打ち込む。何の反応も出来てないその脇腹に拳をめり込ませあばら骨をへし折った感触を感じ取る。これまた手応え十分。最後に右端のがっちりとした体形の男の前にステップインで踏み込むが、相手もさすがにガードを上げ始めていた。

それでもお構いなしにそのガードの隙間を縫ってのボディぶろーを放つも伝わってきた感触は岩を打ったかのような硬い感触だった・・・

すでに高質化の能力を発動してたのか。


それならばと、喉を掴み上げての相手の全体重を載せて後頭部からの喉輪落とし!

男の頭蓋がコンクリートに陥没した・・・


その間わずか0,5秒・・・


ータイムアクセル解除ー。

「ドンドンゴン・ドゴーーン・・・」


音すらも置き去りにして翔矢は動いていた・・・


この動きをとらえてた者がいただろうか。

しかしこの攻防の瞬間も翔矢は見逃さなかった。

藤代の両脇の男が翔矢の姿を目で追ってきてたことを・・・

ほかの者の視線は動いてはなかったが、その両脇の男の視線は動いてたのを視野に捉えていた。


そして藤代が口を開いた。

「ほぅ、すばらしい瞬殺か、瞬きする間に倒されてるぞ」


「これで今後あきなに手出しは無用ということでいいな」


「そうだな、今回は一人で来たお前のその胆力とこの結果に免じて手は出さないと約束しよう。所詮単なる暇つぶしの遊びだったものだ。」


「わかった。ならば俺もこれで終わりだ。」


「水城とか言ったな、お前フリーなんだろ組織ウチに来ないか?」


「もう行先は決まってる。」


「そうか残念だが、いつでも来いよ・・・」



 そして翔矢は倉庫を後にする。

念のためあたりの警戒を緩めることなく帰路に就く。

もし相手が闇討ちするのであれば、こっちが勝って油断してると思ってる今だろう・・・



 思い過ごしか・・本当にこのまま帰すのか・・・そう思った時だった。








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