第22話 少しの期待と少しの恐怖。



 あきなに勇気をだして連絡を取ってもらい、話は俺がつけた。港の倉庫に0時。

それからあっちゃんに連絡をとり、万が一の時は、あきなから連絡が入ることを伝えその時はよろしくとお願いした。

あっちゃんからは

「任せといて、タイタニック号に乗ったつもりでバッチコーイ」

「いやそれ・・・沈むから・・・・」

「んじゃ最強の戦艦大和に乗ったつもりで!」

「いやそれも・・・・」


あっちゃん流の和みなごだとは、わかってるが・・・まぁじっちゃんの仲間だから間違いない。最後の方あっちゃんが何かゴニョゴニョ言ってたがとりあえず通話を終わらせた。


俺は普段のくつろいだ様子を装ってのんびりしていたが、あきなはやはりどこかそわそわした様子で、会話も弾むわけは無く二人の静かな時間は過ぎて行った。




~~~~~~その頃~~~~~~



 連絡を受けた藤代は、ワイングラスを片手に高層マンションの最上階で優雅にくつろいでいた。

(たかだか無名の異能持ちが俺を呼び出すだと・・・・まぁこの退屈な世の中のほんの暇つぶしになるだろう・・・)

「おい、バサラの三兄弟を呼べ」

「はい畏まりました。」


程なくして三人の男が藤代の部屋に現れた。

一人は肉付きのよいがっしりした体形の男、一人は細身の腰に刀を携えた男、一人は小柄で腰に鎖鎌の様なものを携えた男。


「今から一人の異能者と会うが隙あらば三人で一気にカタをつけて構わん。」

「そいつはどんな能力で、強いんですか?」

「わからん、暇つぶしがてらそれを確かめにいく。」

「殺しちまってもいいんですか?」

「構わん、その程度で死ぬ奴に用はない。」


  (フフフ・・・いい暇つぶしになりそうだな・・頼むから一瞬でやられてくれるなよ)




~~~~~~・~~~~・~~~~

ー数時間後



 

 夜も更けて、寛いでる雰囲気をだしている翔矢もやはり時計が気になった。

そろそろかな・・・さっきから流れてるTV番組の内容なんか全然頭に入ってこない。それよりも翔矢はこの世界に来てからの事を思い出していた。


 この世界は一見元居た世界と何ら変わらないように見えるが、驚愕の違いが合った事。そこではじめは誰とも関わらずにひっそりと生き抜こうと決めた事。

その矢先にあきなとの出会いで、実は自分の気持ちが軽くなり救われたこと。

そんな思いに耽っていると涙が出そうになったので決意した。


そろそろ向かうか・・・


「んじゃそろそろちょっと行ってくるね。」


「・・・・・」


あきなは、何か言いたそうにしてたが俺の覚悟は先ほど話した通りだし、決意は揺るがない。

玄関までとぼとぼ見送りについてきたあきなが、俺の背中に優しくしがみつく。

俺はあきなに向き直り、大丈夫だからと優しく呟いた。

あきなは俺の首に手をまわしてきて・・・やさしく口づけをした。


「これで勇気100倍だね。」


「必ず無事に帰ってきてくださいね・・・」


俺はやさしく微笑んであきなの頭をポンポンした。

そして俺は指定された港の倉庫に向かうことにした。





~~~~~・~~~~~・~~~~~~~

 


 「翔ちゃん大丈夫かなぁ~」

 「彼なら大丈夫だろう、念のためアウルに追跡は頼んである」

 「あちしもちょっと覗きに行ってこようかな・・・」

 「マスターも手出し無用と言ってただろう、それにあのスピードがあればいざとなれば逃げれる」

 「そうなんだけどねぇ・・・なんだか胸騒ぎが・・・」



~~~~~・~~~~~・~~~~~~~



 久しぶりに夜空を見上げた気がした・・・

空には雲もなくきれいな三日月が見えた。

明日は晴れるかな・・・


準備運動がてら力を発動する。

軽くダッシュ、うん絶好調だ。あとは己を信じるのみ。


綺麗な月夜のせいか、これから危険な場所に行くというのに心が躍る・・・

少しの興奮と・・・少しの期待と・・・少しの恐怖を胸に秘めて・・・



 さぁここからだ、新しい世界の扉を開けに行こうぜ。







 

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