第21話 俺がオレであるために
ドアを開けたあきなちゃんは、おもいっきり俺に抱き付いてきた・・・
「もう戻らないかと思ってました・・・」
「おれはそんなに無責任じゃないよ。」
優しく手をまわし、あきなの頭をポンポンした。
それから二人は部屋に入り、そのままあきなの寝室に行きベットに・・・
そんな妄想をしてたら俺のおなかが鳴った。
「お腹空いてるんですね、すぐに準備しますね。」
おい、おなか、空気を読んでくれよ・・・
あっちゃんばりの空気を読んでないのか読んでるのか絶妙なタイミングで鳴ってくれたせいでその場は和み、居間であきなが用意してくれたレモンティーを飲みながら寛いでた。
しばらくぼーっとしながら考えていた。
どうやってあの藤代とかいう連中にあきなから手を引かせるか。
話して済むような相手じゃないだろうなぁ。
金は無いし、あっちは持ってるだろうな・・・
ぶったたくしかないか、もう手は出さないと思わせるほどの圧倒的力で・・・
ふとあきなの方を見るとにこやかな顔で料理をしてる。
台所にたつ女の子の姿っていいよな。
あっちゃんワールドで言う、これがキュンキュンすると言うものだろうか。
俺があきなの所に行き何か手伝おうか?と言うと、もうできるからご飯だけ粧ってくれる?と言われたので渡されたお茶碗にご飯を粧う。
まもなくテーブルに食事が並べられた。
「今日のメニューは鶏肉のソテーとアクアパッツアとサラダです。」
「凄い美味しそう!」
「お口に会えばいいけど・・・」
あきなは少し照れたように微笑んだ。
それがもう堪らんかった・・・
こんなにすごい料理をパパっと作れて・・・キュンキュンする。
そのとき翔矢は決心した、この子の笑顔を涙で曇らせる奴には容赦しない!
おれは怖い顔をしてたのをハッと我に返った。
「美味しくなかった?」
「あぁごめん、ちょっと考え事してた・・・凄い美味しいよ!」
「お口にあったなら良かったけど・・・」
俺のせいで、少し気まずい雰囲気になってしまったので、なんとか話題を探し場を和ませようとした。
料理得意なんだねと褒めると、料理は好きだけど今まで振舞う相手がいなかったので今日は頑張りましたという事だった。
なんとかその場を取り繕い、穏やかな一時を楽しみ食事を済ませ、後片付を手伝った。
一人暮らしもしてたので洗い物なんかは得意だった。
「洗い物慣れてますね。」
「一人暮らしももう2年になるかなぁ・・・なので身の回りの事は一通りは。」
「そういえば私は水城さんの昔の事は全然知らないな・・・」
「そだね、片づけ終わったら少し話そうか。」
そして俺はすべてを話す決心をした。
食後のコーヒーをあきなが淹れてきてくれた。
今朝ざっくりとはあきなに話してたけど、たしかにあっちの世界での事など昔の事は何も話してない。
「何が聞きたい?」
「そうですね・・・水城さんの子供のころとか」
そして俺はとある田舎の漁村で、母さんとじっちゃんと三人で暮らしてたことを話し始めた。
父親は物心ついた時にはいなくてそれが普通の生活だと思ってた。
じっちゃんはあっちの世界では10年前に嵐の事故で失踪して、母親は2年前に死んだことを話したらあきなが少し申し訳なさそうな顔をしたから、今日の朝じっちゃんとこっちで再会できたことを伝えると最初驚いたが、涙を流して喜んでくれた。
俺は高校卒業して地元の引っ越し屋さんに就職して働いてたけど、母さんが死んでから心機一転東京でやってみようと思ったけど、こっちに来てからもやはり引っ越し屋さんで働いてたことを話した。
そしてガードレール突き破ったと思ったらこの世界に来てしまったことを話した。
こっちに来てからの吹き出しそうになりながら順応してたことなど面白おかしく話してたらあきなに笑顔が戻った。
ホントはこの世界の状況に怯え誰とも関わらない事を心に決めて、ひっそりと生きようと決心してたら、どこかのかわいい子と偶然出会ったことを話した。
そして俺の環境は大きく変わったこと。でもおかげですごい楽しい生活を送れてることを話した。
あきなは少し頬を朱に染めてた。
やっぱりあきなは可愛いな。この笑顔をもう二度と恐怖で曇らせない。
おれは決心をした。
「あきなちゃん、藤代の連絡先知ってるよね?」
「え? ええ・・・・」
「今夜俺が話をしてくるから、連絡とってもらえるかな?」
「・・・・・」
あきなは戸惑っていたが、話をしてくるだけだよと嘘をついた・・・
でもそんな嘘簡単に見破られるわけでそんな話のわかる連中じゃないのは、あきながよく知ってた。
必ずもどるからと言い聞かせここで待ってもらうように伝えた。
もし万が一朝になっても戻らなかったらここに連絡してほしいとある連絡先を伝えた。
おれのじっちゃんの仲間だから信頼できることを伝えて、俺もやばかったら超スピードで逃げるからと言い聞かせ、ようやくあきなを説得できた。
さぁこれは、俺がオレであるための決断・・・
覚悟は決めた。
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