第20話 その男まさに傾奇者
~~~~「白夜」アジト内~~~
あっちゃんは棒つきキャンディーをペロペロしながらソファーに寝ころんでいた。
「どうなのよ、ガイちゃん。結局のところ翔ちゃんはやっぱ凄いの?」
「今は力に目覚めたばかりだが、無限の可能性があるな。」
「ふ~ん、やっぱ凄いんだね。ペロペロ」
「これからどう覚醒するかは、あいつ次第だがな・・・」
「力にとりこまれちゃって、閻魔みたいになっちゃったりして」
「それは無いと思うが、閻魔を倒すのは彼かもしれんぞ。」
その時だった。真っ白のまるで戦国時代の傾奇者の様な出で立ちをした一人の漢が入ってきた。
その両腰には二本の大太刀が携えられており、眼光は鋭く総髪を結っていた。
「誰が、閻魔を倒すって、あいつはいつか俺が切る!」
その漢の背中には「悪・即・斬」の文字がでかでかと刺繍してあった。
「ひゅーハクちゃん今日もロックスター並みに決まってるね。」
「おー白、今日も任務完了か?」
「瞬殺だ、あんな雑魚集団、鬼丸で切るのももったいねー」
その漢、コードネーム【白雷】、あの戦国時代最強ともいわれた剣豪宮本武蔵を彷彿させる二刀流の使い手で、もちろん異能者である。
嘘かホントか、腰の大技物はあの御物であるはずの鬼丸国綱だという。
せっかくの国宝、倉庫の肥やしじゃもったいねーだろう、俺が世のため役立ててこその剣だと借り受けてきたという。
刀を抜いた白雷を止められるものなどこの国にはそういない・・・
そこに翔矢とマスターであるじっちゃんが入ってきた。
「おーお前がマスターの孫かー」
翔矢は一目見て、思わずタイムアクセルを発動した。
そう、白雷は翔矢に向けて闘牙を放ったのである。体にその闘牙を浴びた翔矢は抜き身の刀を突きつけられた錯覚を覚えた。
闘牙というのはいわば気であり、白雷の技の一つで最大威力の闘牙を浴びたものは金縛りにあうという。
「白よいたずらがすぎるぞ・・・」
「すまん、すまん。あまりにいい力をもった奴がいたので、興奮して闘牙が漏れちまった。」
「はじめまして水城といいます。」
翔矢は、白雷のそのオーラに気圧されていた。
戦国時代の命のやり取りを日常でやってた者というのはこんな感じなんだろうかという印象を受けた。
「俺は白雷だ、なんなら弟子にしてやろうか?」
「落ち着け白、水城君がびっくりしてるだろうが。」
翔矢にとってその溢れんばかりの力を持つ存在はその時から目標の一人となった。
「翔よこれからどうする?」
「まずは一旦戻って、自分の問題を解決したら必ずここに来るよ」
「ハクちゃんに全員ぶったぎってもらえばいいのに。」
「おぅ、どいつらだ全員瞬殺だ。」
「ハクちゃんの嫌いな黒衣の連中だよ。」
「あの数だけのゴキブリ連中か・・・」
「これは俺自身の問題なんで・・・」
じっちゃんの、これは翔が決めた事だ。この一言で誰もそれ以上は言わなかった。
「翔よ、強いものと闘うときはひたすら己を信じよ。ただし弱いものと闘うときは少し気を付けるんじゃぞ。」
強いものと闘うときは己を信じよというのは分かるが、弱いものと闘うときは油断するなという事だろうか。翔矢はその言葉の意味を自分の心に留め置くようにつぶやいた。
もう夕暮れが近づいており、あきなの事も気になるので必ず戻ってくることをじっちゃんと約束し一旦アジトを離れる事にした。
帰りはまた黒のワゴンに乗せられ、あっちゃんが見送りに来てくれたが目隠しは無かった。
もう組織の一員のようなもんだから必要ないとの事だった。
「翔ちゃんの問題が片付いたらまずは、デリシャスパーチーだね。」
「あぁ、いろいろありがとう。また。」
そしてあっちゃんと別れた翔矢はタイムアクセルを発動し、これまで以上のスピードであきなのもとへ帰った。
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