第10話 初めての戦闘
やるしかないな・・・
相手は三人やれるのか!どうする、どれからやる!たぶんあのおやじは大したことないが後から来た二人が分からないな。ひとまずあきなを後ろに下がらせて、様子を見る。
そうだ俺には観察する時間がめちゃくちゃある、相手をよく見極めろ。
「こいつですか、昼間邪魔した奴って、俺にやらせてくださいよ」
「気を付けろよそいつ何かやってるぞ」
後から来た男の一人が両手をだらりと下げて前傾姿勢で、カモンというポーズを取って来た。
拳をよく観る、そこまでつぶれてないと言う事は打撃系では無いな、盛り上がった僧帽筋、構えからするに総合系か。
(タックル狙ってんのかな?)
今の俺なら余裕で膝を合わせられる自信はあるが、どうする先に攻めるか・・
俺はとりあえずボクサーのファイティングポーズを取り、じりじりとその男との間合いを詰める。空手じゃないのかって?格闘技を多く見てる俺の中での最速の攻撃は、やはりボクサースタイルから繰り出されるパンチだ。
歳は20代後半かその雰囲気から喧嘩慣れしてるだろうことはすぐに感じ取れた。一応他の男も警戒しながら、一瞬で間合いを詰めれる距離まで近づいたらジャブ入れてみるか、当たればそのままストレート打ち込むまで。
いつ来る?後はタイミングを見計らうまで俺には絶対のスピードがある、自慢じゃないがパワーもある。
しかし、実践の場数が少ない。傍から見たらほんの一息のこの時間だが、俺には10分以上睨み合ってるようだ、圧倒的に俺が有利なのは自覚してるが、心臓が高鳴るのがわかる。
しかしこれは恐怖では無いな、俺がどこまでやれるのか試したい!本音はこうかな。
楽な道を選ぶとするなら今すぐあきなを抱きかかえ、猛ダッシュで逃げれば追いつくことは出来ないはず。
だがそうではないだろう、俺はこの世界でどこまでやれるか試したい!通用しなかったらその時はもうダッシュだ。
そうしてると相手の眼の光が一瞬強くなったのを感じた、来る!
大丈夫だ己を信じろあれほど格闘技は見て来たじゃないか今こそ実践だ!男を見せろ!
一気に間合いを詰めて来たが俺にとっては超スロー、やはりと言うか腰目掛けてタックルの構えで突っ込んでくる、これならアッパーが綺麗に入るな。
思いっきり男の顎を右アッパーでカチ上げる、ズシリと右拳にのしかかる重量感、間違いなくクリーンヒットだ。どうする?これで様子を見るか、いや未だだ、この後三人で来られたたら厄介だ。ならば確実に潰すまでよ・・
浮いた顔にすかさず左を入れてのけ反った所に渾身の右ストレートで男は後ろに吹っ飛んで行った。
両拳に残る人を殴った感触。間違いなくしばらくは動けないであろう確信を掴んだ。
こういう時、格闘オタクのスロー再生での研究が役に立つよな・・・
どうするこのままもう一人の男に行くか?
「こ、こいつ異能持ちか・・・」
もう一人のデカイ男が呟くように言ったのを聞き逃さなかった。何?イノウモチ?何それ、俺のスピードの事か?・・・
デカイ男は焦った表情はしてるいがまだ戦闘態勢に入ってないのを確認したので一気に詰め寄り、まずはどてっ腹におもいっきりヤクザキック。
ハイハイ反応遅いですよ、棒立ちだったので思いっきり後ろに転がっていく・・・
おやじは既に逃げの体勢に入ってるのを横目で確認し敢えて追わなかった。そいつを追うよりこの後ろに転がった奴のダメージはまだ不十分だから追い打ちを優先した。
まだ転がったままか・・・そんな無防備で次の攻撃どう対処するのよ。
そう傍から見たら一瞬の時間でも俺の中ではスローモーション。男のダメージを確認するため少し待ってあげる。そこでようやく男が受け身を取って起き上がろうとするモーションに入ったのを確認。
やはりまだダメージは足りてないな。
起き上がろうとしてる頭を掴んで思いっきり膝を入れる。
(ウハー顔が思いっきり変形してて痛そう・・・これで十分だろう。)
よしやれた俺!この世界では充分に通用する!高揚で胸が高鳴ってる自分を少し心地よく思った。
あの大男何か言いかけてたな。 イノウ?なんか分からんが落ち着いて状況把握
最初の男は仰向けに倒れて動かないから意識は無いだろう。
長居は無用だと判断した俺は振り返り、震えてるあきなを抱え上げて全力ダッシュ。
(あきな、軽っ、落ち着いたら取り合えず経緯を聞かないとな・・・)
なにせ翔矢はこの世界では時速200km以上で走れるのだ、追いつける奴はいない。
そしてそのままあきなの家の前まで走って行きあきなを下ろす。
あきなは、おそらく翔矢の疾走速度にびっくりしてるのだろう、少し放心状態の様な顔つきだった。
こういう時はどうしたらいいんだろう明らかに場数のない翔矢は思考をめぐらしたがやはり正解が導けないまま、とりあえず家の中に入り翔矢は腕時計を外しゆっくりと喋り始めた。
「びっくりした?」
「びっくりというか、何が何だか・・・」
そうだろうな、普通の人は今の間の出来事を理解できるはずがない、まるでジェットコースターにいきなり乗せられた気分だろうな。
「俺の事は後で話すとして、まずはあきなちゃんからだね?」
「あたし・・ですか?」
「そう、あいつらの事」
「・・・・」
そして俺たちはリビングに移動して、あきなはレモンティーを持ってきて座った。
あきなの顔に笑顔は無かった。それはこれから話そうとしてる事を整理してるのか少しの沈黙があった・・
「ごめんなさい、実は隠してる事があります。」
それからあきなはゆっくりと本当の事を話してくれた。
言い寄られていたのはあのおやじでは無く、藤城とかいう男だと言う事。前に少しだけお付き合いをしたことが有ったが、その男の裏の顔を知り怖くなって逃げだしたとの事だった。
それからしつこく纏わりつかれるようになったとの事。
その男は、裏社会のボスであり殺し屋稼業もやってはいるが、表向きは資産家で通している事を喋ってくれた。
そしてその男の名前を出すと、どこのボディーガードにも断られたという事も話してくれた。
「お店の人は知ってるの?」
「知らない、相談できない。」
あきなは、お店に迷惑が掛かるのを恐れてママには言えないでいると言う。
言えばママが間に入ってくれるだろうが恐らく店が無事では済まないと一人で悩み怯えていたと言う。
俺は、もっと悪い事を想像してた・・・
あきながどこかのホストクラブにでも入れあげて借金でもあるのかと・・・
俺はまた一気にあきなが
そう言う事であれば、相手もそう手荒な殺し屋をよこしたりはしないだろうなと自分に言い聞かせる様に考えた。
とりあえずはここに居ても大丈夫そうだな、
最悪場所を移すかと考えていたがその必要はなさそうだな。
「と言う事であれば、命を狙われる危険までは無いと言う事だね、大丈夫だよ受けたからには守り通すから、安心して。」
そう言うとあきなは安心したのか、ぽろぽろと涙を流し始めた。
俺はゆっくりとあきなに近寄り優しく肩を抱き寄せた。
俺はあきなを慰めるつもりで肩を抱き寄せたが、本当は俺自身がこの世界で生き抜くことができるか不安だったのかもしれない。
あきなの体の温かさと、少しだけ拳がジンジンしているのが、今この世界で俺が生きているのを実感させた。
~~~
「末竹さん何なんすかあの男、普通の人間の動きじゃないっすよ?」
「だからいいっただろうが、驚くくらい強いって・・・あいつ絶対異能持ちだな、そうとなりゃ俺らの相手できるレベルじゃねーな、帰って藤城さんに報告だ」
「おい、寺崎、動けるかー?」
「あぁ・・・どうにか・・・」
公園では男たちがやっと気を取り戻し辛うじて動けるようだがかなりの重症だった。そして男たちは藤城のとこに戻り、報告した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます