第6話 ど、ど、ど言う事!?
気分はまるで恋人が出来て、この世界が修羅の国なのも忘れまるで春が来たかのような、危機感の欠片もない状態で楽しみながらルンルン気分で帰路についた。
そしてあきなの家に帰って来た。
部屋に入ってまだ、どこかぎこちなくどこに座ろうか迷ってるとあきなが声かけて来た。
「水城さんの家でもあるので、もっと寛いでくださいね。」
とりあえず、全然気使ってないし、寛いでるよーっと雰囲気出してたが、バレバレのようだった。あきなは、何もいわず冷たいレモンティーを入れてきてくれた。俺にとっては5時間のショッピングに突き合わされたのと同じなので、内心喉も乾いてヘトヘトだった。
(これから、あきなと一緒ってことはこのままずっとパントマイムとか耐えれるだろうか・・・)
『ありがとう。』
そう、書いてレモンティを手に取り飲み干してる時だった。
あきなの顔がびっくりした表情に変わって行く。
(あれ、思わずごくごく飲んじゃったの早すぎたか)
そのままコップを口に当ててパントマイムでゆっくり飲んでる振りしてると、あきなが一点を集中してみてるのが分かった。腕時計だった。
俺は内心しまったと思った。
あきなから見ればこの腕時計くるくる針が速く動く壊れた時計に見えてるはずだ。
良く売ってるようなミリタリータイプの衝撃耐性と防水に優れアメリカ軍でも採用してますよーと言ったそんなに高くない腕時計だから、別に気付く人もいないだろうと思ってずっと付けたままにしてたが、まずかったか。
次にあきなから聞かれることがすぐ分かってたので、俺は何て答えようかゆっくり考える。
そしてゆっくりあきなの口が開き始めて予想してた質問が来た。
「その時計壊れてないですか?」
(ハイハイそう来ますよねー何て答えようか・・・うーん誰か良い言い訳考えて・・・)
そうして俺は腕時計を外して思いついた答えをパントマイムでゆっくり書いてる時に事件は起こった・・・・
俺は心臓が飛び出るくらい跳ね上がったかも知れない、おそらくとんでもなく焦った顔してたであろう。ガードレール突き破ってこっちの世界に来た時くらいびっくりした。
あきなの喋る速度が現実世界と同じ速度で聴こえて来たのである。
「なんで、そんなにゆっくり書いてるんですか?」
俺は思わず声を出してしまった。
「えっ!」
「あっ、声出る様になりました?」
あきなの喋り方がいつもの壊れたレコードではなく普通のスピードで聴こえて来たのである、一瞬俺は今何かしたか自分がどんな行動したか考えたが、焦りすぎてパニックだった。
俺の脳内変換がとうとう時間の流れまで超えて普通に聞こえる様になったのか。
そしてあきなを見たら、動きがごく自然でパントマイムじゃない。
(あれ、時間の流れが俺の居た世界と同じ速度になったのか、それとも俺の脳が今までエンドルフィン垂れ流しでこの世界がスローに見えてたのか・・・)
軽いパニックで腕時計の考えてた言い訳も吹っ飛んで今の状況把握するので頭がいっぱいだった。
(落ち着け、俺は今何をした・・・誰か時を止めて!)
そしてとっさに声が出るふりしてごまかそうとした。
「あ・あーあーあー、いつの間にか治ってたみたい」
普通に喋ってあきなの表情をスロー再生が始まるのを期待して観察したが、普通ににっこり微笑んで
「結構イケボですね。」
「そうかなー」
俺は平常心を装って必死に顔が引きつらないように笑顔を作った。こういう時は引っ越しで培った営業スマイルが役に立つ。
でも背中は冷や汗ぐっしょりだった・・・
「それで、その腕時計はなんなんですか?」
(あーそこ突いちゃうの、だれか時間を止めて俺に考える時間をーたのむー)
そして今思いついた言い訳を言い放った。
「実はこれは時間を5倍早めてくれる時計なんだ」
そう言って俺は腕時計をまたはめなおした。
すると、驚愕すべき光景が・・・
ほんとに時間がスローで流れ始めたのである。
あきなの笑い声が壊れたレコードの様にゆっくり響き渡る。
「おおおおおおおおっももももももししししぃぃっぃろろろろおおおおおおおおいいいいいいいいい」
(いや、お前の方がおもろいけどな・・・)
そしてそのゆっくり過ぎ去る時間の中で俺は一つの結論に達して確かめる。
腕時計を外して普通に喋ってみる。
「あ、面白かった?」
「かなりウケるんですけど。」
「その冗談のためにつけてるんですか?」
そして俺はとっさに考えた言い訳を説明した。
「これは、そう言って友達から誕生日プレゼントに貰ったんだ、実際5倍速くこの時計は動いてる、時間を無駄にするなって冗談で作られた時計なんだけど、衝撃耐性や防水は本物で、面白いでしょ。」
「そうだったんですね、おもしろーい」
この世界の人がつけてもそうなるのか少し興味はあったが、あきなに試すのは危険すぎると判断し、やめた。
っで、俺の足りない脳みそで必死に考えた結論は、そう言う事らしい。どうやらこの現実世界で作られた時計を腕に付けると前にいた現実世界のここより5倍速く付けた本人だけ時間の流れが変わる様だ。そうとしか思えなかった。
翔矢がこの真実を知らされるのはもう少し先の話になる。
そうして落ち着きを取り戻した俺は、これは使えるなとオンオフの切り分けを考えようと思った。そして腕時計を外しながら、背中ぐっしょり脇びっしょりがばれる前にシャワーを借りることにした。
「朝から仕事してたのと出かけたので、シャワー借りたいけどいいかな?」
「どうぞ、ご自分の家と思ってご自由に使ってください。」
「ありがとう。」
そう言って俺はシャワー浴びながら少し計画を立てることにした。
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