第2話 検証



 

 かなりの時間考えたが、頭がおかしくなりそうだった、そんな事ありえないと何度も打ち消した一つの考えしか出てこなかった。


 そして翔矢は一つの結論に達した。あの事故は実際に起こったことで何か違う世界に飛ばされたな・・・っと。

そしてこの世界では恐ろしく時間の進行が遅いんだろうなという結論だった。


 しかしどのくらいの差があるんだろう・・・・体感的には10倍くらい差がありそうだと思った。

腕時計を見た、そして驚愕した。その時計の刻む秒針はいつもより少し遅く感じられたが10倍ほどの差では無かった。

高校までしか出てなく、授業もまともに受けてない翔矢には難問すぎた。

(この時計は俺のいた世界で作られたからそのままの時を刻むのか?)

そこで閃いた、この世界の時計と比べればどのくらいの差があるのか解るな。


そして文字盤の時計を探した、相変わらず行きかう人はパントマイムをしている。おそらく今の翔矢の姿はだれの目にも写ってないだろう。


 人は既成概念に捕らわれその範疇に無い物は意識に残らないのである。


この世界では翔矢は10倍速で動いてる事になる。よく見れば残像として残るかもしれないが意識しないと見えてないだろう。


そしてコンビニの壁に掛かった秒針の付いた時計を発見した。店の外から腕時計と見比べながら時間の差を計測した。なんと5倍も差があったのだ・・・


腕時計が5秒進んでやっと一秒進む感じだった。一分で11秒ちょっとくらいに見えたので正確には分からないが、5倍は差が有る事がわかった。

しかし納得がいかないあの速度は5倍なんてもんじゃない。

もしかして俺はこの世界に飛ばされるにあたって早く動けるようになったのか?

だがそれを知る術は翔矢には無かった。


 そして有る事を思いついた。100mを自分の時計で何秒で走れるか測ってみよう。

翔矢は高校時代ラグビーをやってて、足はかなり速い方だった。たしかそのころのタイムは11秒台だった。


 しかし、どこで計測するかという問題があった。正確な100mなんて測れないし、どこかの学校のグランドに行けば100m走測る所があるかもな知れないと思い暗くなって忍び込んで測ってみることにした。その為、まずは学校らしきものを探した。


 学校は無かったが、グランドに一周200mは有るだろうコースと、100mと思われる直線コースがある公園を見つけた。

よく観察すると学生らしきものがその直線を走りタイムを計測してる風景が見て取れた。


 そこでまたある違和感が生まれた、翔矢は軽くジャンプしてみた、普通だった。

あんなにふわふわ浮かないのである。多少滞空時間伸びたか?っと思われる程度だが、そう思い込んでる気のせいかもしれない。

(俺だけ時間の流れが違うのか?・・・)

幾ら考えても分からないので考えることを止めた・・・。


 そこで走ってる人は皆パントマイムしながら月面歩行してるので、見てて飽きなかった、特に揺れる乳を見るのはたまらなかった、スローモーション再生であった。


あまりじっと見ると変態と思われるから他所を見ながら目だけでちらちらと見た、たぶんこの世界の人には俺が乳を眺めてるのに気づかない。


じっとしてればこの世界の人と何ら変わらないのである。

暇になってきたので俺もパントマイムで歩く練習をしてみた、他の歩いてる人の速度を観察しながらなるべく同じ速度で動くようにしてみた。


 だめだ・・・笑いがこみあげてくる・・・


どれだけの時間がたったのだろうやっと日が暮れて来たこの世界の一日は想像を絶する長さに感じられた、そうはいっても腹は減るのでコンビニで何か買う事にした、そこでやばいことに気が付いた。


書かれてる言葉は日本語と変わらないので言葉は通じそうだが、お金は使えるのか?

財布を確認した2万くらいは入ってた。とりあえず出してみて通じなかったら逃げよう、そう考えた。


そしてコンビニに入り怪しまれないようにパントマイムで移動する。

自分が普通のコンビニの店内で真顔でパントマイムで、ゆっくり移動してる絵を、想像してみた。


 やばい笑いがこみあげてくる・・・。


クッ・・・・ク・・・・・クク・・・・


やばい気が付かれたら単なる頭のおかしい奴だ、笑いをこらえながらコンビニ歩いてる奴なんかまともじゃない。落ち着け俺。


そしてお握りと飲み物を手に取りレジにパントマイムで向かう。

だめだ限界だった。


「いぃぃぃっぃらぁぁぁぁぁぁぁしぃぃぃやゃゃゃいまままぁぁぁぁぁせせぇぇぇぇえ」


真面目な顔でそんなふざけた声で喋られたら俺はもうだめだ・・・・壊れたレコードの様だった。


俺は顔を赤くして思いっきり腿をつねった。俺がんばった。


財布から千円取り出しゆっくりとしたパントマイムで渡す。普通に手が伸びてきて、俺は慎重に表情を確認した。少しでも驚く素振りがあれば、ダッシュでお金奪って逃げよう。あ、俺のお金ね。


「せせええぇぇぇぇぇぇんんんええええぇぇぇぇぇんんおおおおああああぁあぁぁずずずかかかかかりりりししししまままままぁぁぁすすすすすす」


俺は目にも止まらないだろうガッツポーズを取りすぐさま平常心を装った。


俺はゆっくりと店を出ながら安堵した。これでしばらくはこの世界でも過ごせるな・・・

そう思ってるとふと新聞が目に入った、あ、この世界の情報を知るにはいいな。

ゆっくりと新聞を手に取りレジに戻りお金を払って出て来た。


その新聞を読みながらお握りを食ってると俺は顔を青ざめた・・・・

この世界のとんでもない相違が書かれてあったのである・・・




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