【07】

生物兵器<ソミョル>は自身の外殻を伸ばしながら、移動を続けていた。<ソミョル>は成長のための養分となる、この惑星の生命体の密度が濃い場所を目指して自身の外殻を伸ばし、その中を通路として移動していた。<ソミョル>自身には運動機能がなかったので、移動のためには<共生者>による補助が必要だった。<ソミョル>は移動の途中で近辺に存在する生命体を<共生者>に捕食させながら、外殻の延伸に必要な養分を補給し続けて来た。<ソミョル>と<共生者>には、生命体の存在を周囲との熱量の差によって感知する機能が備わっていた。それが唯一の感覚だった。そのため、周囲の温度と生命体が発する熱量の差がより顕著になる場所や時間帯で、<共生者>による捕食活動が活発化するのは必然と言えた。

<ソミョル>にとって都合が良かったのは、最初に漂着した場所の周囲に豊富な流体が存在していたことだった。更に<ソミョル>が漂着地点から熱源を目指して移動して行った場所では、その流体で満たされた導管が大規模なネットワークを構成していたことが、<ソミョル>の活動を活発化させる要因となった。その導管を外殻の代用とすることで、<共生者>を駆使して周囲の生命体を捕食する範囲を飛躍的に広げることが出来たからだ。

<共生者>は、流体が満たされた<ソミョル>の外殻が構成する導管の中で静止し、熱源の接近を感知して襲撃し捕食する。捕食によって得られた養分は現在、<ソミョル>の外殻の延伸によって消費されていた。<ソミョル>が漂着した地点から現在地点までの外殻の長さは、既に20kmに達していた。不要となった一部を切り離して来たものの、途中で周囲に伸ばした分枝を加えると、その数倍の長さになる。しかし生物兵器である<ソミョル>にプログラムされた、爆発的な成長を開始するためには、定着する場所が必要だった。<ソミョル>は外殻を四方に延ばしながら、まるで機械が組み込まれたプログラムを実行するように定着する場所を探していた。

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