最近はやりの異世界と日本を行き来する小説 シュール
最近小説投稿サイトでは日本と異世界を行き来する話が流行っているらしい。
小説の主人公たちは半分は日本、半分は異世界で暮らしているってことだろうか? 魔法と剣のファンタジー世界と現代の生活のできる日本のいいところどりができるのは凄いいいよな。
俺もそういう立場になるなんて昨日までは思っていなかった。ある朝目覚めたら俺の左半身だけが異世界で目覚めた。
右半身は普通にアパートにいる。がちゃ目なんてレベルじゃない。左右の目で全然違う映像を認識してて頭がおかしくなる。なんでこんなことになったんだ? 昨日俺は何をしてた?
確か酒を飲みすぎてタクシーに乗った後の記憶がない。タクシーで改造手術でも受けたとしか思えない。とにかく会社にはいかないといけない。右半身の俺が立ち上がる。左半身は動かない。気持ち悪いがそれぞれ独立して動きやがる。
右俺が鏡の前に立つ。本当に半分ない。断面図は真っ黒になっててグロ画像にはなってない。しかし普通に歩くようにバランスはとれるこれも不思議だがこのまま外に出たらどうなるんだろうか。
仕方ないから黒い合羽を羽織った。怪しすぎる。その間に左俺はスライムとの戦闘に突入した。くそ、忙しいな。歯磨きしながらスライムをぶん殴るとなんかお金を落とした。どんな原理か知らんがRPGみたいなもんか。
とにかく右俺は会社へ、そして左俺は異世界を探索することにした。あまりに異常な状態で逆に冷静になってきた。盗賊が現れた。
「なんだこいつ!」
盗賊の分際でまっとうな感想を言うなくそ! むかつく。俺は盗賊を殴り倒す。そこで気が付いたが俺は結構強いみたいだ。右俺が駅の改札を通った時に思った。
こんな感じで俺の奇妙な生活が始まった。右俺は信頼できる上司にこのことを打ち明けた。最初変な目でみられたが体を見せたらマジで恐怖の顔をして壁に張り付いて許しを請いやがったから、なんとかしろ、クビにされたら殺すって言ってしまう。俺だって無職は嫌だ。
代わりに左半身の俺は勇者パーティーとかいうのに化け物とか言われて討伐されかかったから返り討ちにした。命まではとる気はないから身ぐるみをはいで使えそうなものは使ってあとは売り払った。
ギルドとか王様とかがそのころ「へへ、魔王をなんとか倒してくれませんかね」とか言われた時には右の俺は繁忙期で電話で忙しく、しかも片手でまじでイライラしていたから国家予算を報酬に要求してしまった。今は反省している。
右俺はその状態でもなとかプロジェクトを立ち上げて仕事は順調だった。部下たちを恐怖で支配して裏で操るのは少し楽しかった。半分の俺を見て大体のやつが涙目になっているが知ったことか、生きねばならない。
そこで問題が起こる。右の俺のプレゼンの日と左の俺の魔王討伐日がダブルブッキングしてしまう。両方とも外せない重要な用事だ。スケジュール管理が甘かったことを心底悔いたが仕方ない。両方やるしかない。
「よく来たな勇者よ」
「はい、今日はありがとうございます!」
間違って魔王に名刺を渡すところだった。魔王は困惑していたが悪いな、俺は今すごく忙しい。ちなみに俺は勇者ではない。勇者の装備を付けた一般人だ。
「くらえ! ギガンティックスラッシャー!」
「!!!?」
突然の俺の叫びに部長が目を丸くてやがる。そんな目で見ないでくれ。確かにプレゼンも重要だが世界を平和も重要だ。
大体1時間くらいだろうか、まずは魔王をしとめることにした。魔王というだけあって強大な力を持った魔物だったが、俺はこの異世界で様々な力を得た。具体的に言うと王国の予算をすべて使って武器とか防具とかアイテムとかそろえた、予算は力だ。社会人をなめるな。
「く、そそれほどまでに回復アイテムを」
どんな魔王の攻撃にも専門のアイテムを使う人を配置しているから俺らのダメージはすぐに回復する。完全回復のアイテムをRPGの最後まで使わない人もいるが、俺は潤沢に用意しておいた。
そしてプレゼンも順調だった。億単位での契約だ。さすがにこの姿はではどうしようもないから部下を脅して前に立たせて必死にプレゼンをさせる。なんといっても失敗したら何があるかわからないというか俺と同じ目に合わせるというほらを吹いておいた。実際に俺は何でこんな目に遭っているのかわからない。
「見事だ……勇者よ」
ふう、やっと倒れたか。魔王。
「素晴らしい!」
なんかプレゼンを評価した偉そうな男が拍手している。
その時俺はやり切ったことを理解した。そう考えると体の力が抜けて安堵感に包まれていく。その時だった右半身の俺と左半身の俺がともに光り輝き始めた。左半身は異世界だからいいが、プレゼンの終わりに突然発光を始めた俺をみんながすごい顔で見ている。
視界が光に包まれていく。そうか俺は魔王を倒したから役目を終えたのかもしれない。ということは左半身が元の世界に帰ってくるのだろうか? 正直そう期待したい。そろそろダブルの生活はつらい。
そして光が収まった時。左半身の俺が現代日本。そして右半身の俺が異世界にいた。
突如として剣を持った俺が現れたプレゼン会場は騒然となり、スーツ姿で魔王城に現れた俺の姿を見て仲間たちは目を丸くした。
なるほどな。
おそらくこれは神かなんかを倒さないとだめだな。そう俺は決意した。
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