某所の踏切前 ※実話・ホラー

カンカンカンカン


 この踏切は古いってこの音からもよくわかる。でも俺は永い時間閉まっている踏切はそんなに嫌いじゃない。


 学校帰りに友達と帰ると一瞬だけどさ、でも踏切が足止めしてくれると話す時間が長くなるじゃん。


 その日も成田のやつとチャリを押しながら学校から帰っていたんだ、結構道が暗くて人通りが少ないから小学生の頃は怖い道だった


 住宅街の中にあるその踏切までいくとタイミングがいいことにカンカン音を鳴らす。俺は内心で嬉しいけどそんなこと成田に言うことでもない。


 俺と成田は踏切の前でお互いに好きな女の子の最初の文字を当てるのにやっきになって話してた。カンカンカンカンって音が大きくなったから、線路の向こうを振り返ったんだ。


 なんか。向こう側から黒い霧みたいなのが走ってくる。線路を大きな風? みたいに。俺はなんだか分からなくてほうけてたんだけど、その黒い風はオレたちの目の前をびゅーって通り抜けていったんだ。


 おい、成田! 今のみたか!?


 って聞くと成田は真っ青な顔で何も言わない。俺はチャリを離して成田の肩を揺さぶった。


 おい! 成田! どうしたって。


 その時踏切を電車が通っていった。そしてすぐに踏切が空いてまた静かになった。


「見たか?」


 成田は言った。ああ見たよ、黒いなんか霧みたいなのがすごい勢いで通り過ぎていった。


「霧?」


 成田はは? という、顔にそのまま書いたような表情をした、


「見なかったのか?」


 だから見たって! 黒い霧みたいな


「そんなんじゃない!」


 成田の声が響いた、周りが静かだったから。俺はできるだけ冷静に聞いた。じゃ、お前何が見えたんだよ?


成田は泣きそうな顔でいった。


「手とか足とか」


「ぐちゃぐちゃにくっついた」


「かたまり」


カンカンカンカン


俺たちの前でまた踏切が閉まった

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る