レイニーカフェ3

岸亜里沙

レイニーカフェ3

ぼく近所きんじょに、ちょっとした有名ゆうめいスポットがあります。

あめだけいているおみせ、レイニーカフェ。

あめ行列ぎょうれつ出来できるカフェって、ここだけではないでしょうか。

アンティークな臙脂色えんじいろ肘掛ひじか椅子いすに、重厚じゅうこうなダークブラウンのつくえが、荘厳そうごん雰囲気ふんいきかもす、とても居心地いごこちいおみせ

ぼく病院びょういん通院つういんときあめっていたら、ここのおみせて、やすんだりしています。

ぼく筋萎縮性側索硬化症きんいしゅくせいそくさくこうかしょう、ALSとばれている病気びょうきわずらっているので、マスターのおじさんはぼくると、いつもおみせおくから椅子いす一脚いっきゃくってきてくれるんです。


「おじさん、いつもありがとう」

ぼくうと、マスターのおじさんはニコッと微笑ほほえみながら、ぼくいてきます。


今日きょうもレモネードむかい?」


「はい。いただきます」


「うん。かった。ちょっとっていてね」

そううと、マスターのおじさんは厨房ちゅうぼうはいってきました。


ぼく椅子いすすわってじ、雨音あまおとのメロディーにみみませます。そうすると一瞬いっしゅんからだかるくなるかんじ。

魔法まほうのようないやしの空間くうかん

このおみせなかときだけ、ぼく病気びょうきことわすれられます。


「はい、おたせ。ゆっくりしていってね」

マスターのおじさんが、レモネードをってきてくれました。


「ありがとうございます。あと、今日きょうこそおかねはらわせてください。毎回まいかい、おじさんからのプレゼントだよっておっしゃってくださいますが、おみせのメニューをぼく注文ちゅうもんしているわけなので」


にしなくていいんだよ。ほら、てごらん」

マスターのおじさんは、メニューをひらいてぼくせてくれました。

それをぼくはビックリしました。そこには、『レモネード・・・¥0』と記載きさいされていたからです。


「えっ?なんでレモネードだけ無料タダなの?」


「だから、おじさんからのプレゼントだってっただろ?レモネードだけは、おみせのサービスひんなんだ」

マスターのおじさんがうと、カウンターせきすわっている制服姿せいふくすがた高校生こうこうせいおんなはなしかけてきました。


うそ?レモネードってサービスなの?いつも珈琲コーヒーとオムライスしか注文ちゅうもんしないからからなかった。これだけここのおみせてもまだまだらないことだらけだ。時計とけいことったのも最近さいきんだし」

そうっておんなわらいました。


「あと、これはここだけのはなし。ウチのおみせはレシートをわたしていないんだ。領収書りょうしゅうしょ必要ひつようなおきゃくさんにはいてわたすんだけど、基本きほんレシートはわたしていないんだよ。時間じかんもおかねにせずにごしてほしいっておもいでね。だからたのしそうに食事しょくじしてくれているおきゃくさんとか、こっそり数百円すうひゃくえんいたりしてるんだ。素敵すてき笑顔えがおをどうもありがとうって」


「おじさんって神様みたいだね!」

おんなうと、マスターのおじさんはくさそうにわらっていました。


「いやぁ、自分じぶんはただの道楽者どうらくものなんだよ」


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レイニーカフェ3 岸亜里沙 @kishiarisa

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