第27話
「仙人さま、よくお越し下さいました。お噂は聞き及んでおります」
「まずは、私が名ならなければいけませんね。私はこの
人の良さそうな柔らかい表情で言う。
「俺は
「
と
「うん。
と口惜しそうに
「それも聞いている。
と
「こんな話をするつもりではなかった。あまり、気に病まないで。俺たちは旅をしていて、今夜の宿を探していた時、この屋敷へと案内された。迷惑でなければ、一晩部屋を借りたいのだが?」
と
「ああ、そうでしたね。もちろん大歓迎です。どうぞ、泊っていってください。それと、こんなお願いは礼を欠くようで申し上げにくのですが、私は、仙人さまを見た事が無くて、そのお力をこの目で見てみたくてたまらないのです。あの海峡での出来事は正に神の如くと、皆が噂しておりまして」
と
「なんだ、そんな事か。別に構わない。一晩の宿を借りるのだからな。貴方に見せてあげよう。さあ、外へ」
「さあ、俺の隣へ来て。怖がらなくていい。俺が貴方の身体を支えるから身を任せて」
「上に上がるけれど、怖がらず落ち着いていて」
と声をかけて上昇した。怖がらないでと言われているのに、怖がらずにはいられないほど、二人の身体は高く昇っていた。
「どう? 落ちる心配はないから安心して。ほら、下を見てごらん」
と
「あ、あ。もう……十分だ」
ちらりと下を見ると、身体を震わせて
「そうか?」
「俺の力は楽しかったか?」
と笑みを向けて聞く。
「う、うむ。貴重な体験だったが……」
まだ震えが止まらない
「まあ、初めての体験だっただろうから、無理もないな」
と複雑な表情で言った。
家屋へ入り、
「さて、お聞きしてもいいだろうか?
と
「俺たちはある書物を探している。それが火の国にあると聞き、途中に立ち寄った」
と答えた。
「そうか。その書物は何という?」
「
と
「そうか。
と重々しく言う。それを聞いて、
「まさか?」
「ん? どうしたのだ?」
と
「いや、その考えに至らなかった。鬼術は術者によって独自に
「ありがとう。今、それに気付いて良かった。どちらにせよ、まずは
と言葉を続けた。その晩は、
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