巫女箱師マナちゃん

亀岡たわ太

第1話 箱師マナちゃん

 江方平次(えのかた へいじ)黒髪ボサボサ頭の高校生。ちょっとやんちゃだがこの頃は帰宅部してやさぐれてる。悪いやつでは無い。ただ遊びたくて今何をして良いのか分からないだけだ。


 それでも俺はまじめなので今日も高校へ行く。自転車かっ飛ばして。


「朝、あそこのコンビニのコロッケパン喰わねえと、やる気でねぇんだわ。」


 速度に気兼ねなく坂の下まだ突っ走る。そこには少女がいた。ぼー然として俺の目の前の道に出てくる。


「あぶねえーーーーッ!!!!」


 俺は急ブレーキをした。左右のハンドルを思いっきり掴む。自転車は前のめりになりながら停まった。


「嬢ちゃんあぶねえ。気をつけな。」


「………………。」


 少女は返事がない。今にも倒れそう。顔が真っ青だ。俺は少女の来た脇道を覗く。


 そこには黒い大きな化け物が居た。2メートルほどか? 黒く毛で覆われて顔は白いお面。気味が悪い。手は鉤爪のように鋭利。何かを喰っている。人だ。大人の男女二人を殺して喰っていた。


 もしかして??!! 喰われてるのはこの少女の親か??


「このやろうッッ!!!!」


 俺は自転車に積んであった金属バットを振りかぶり化け物に突っ込んでいった。金属バットは防犯用に持ち歩いてる物だ。やさぐれ特権。


「ガッシャーーーーッ!!!!」


 バケモノはその大きな鉤爪の腕の甲で俺を薙ぎ払った。俺は吹っ飛ばされる。コンクリートの塀に腰を打ちつけた。俺は鈍痛のような痛みに襲われ動けない。すぐ後ろの少女は怯え、腰を抜かし尻餅をついた。


「バッシャーーーーガッッ!!!!」


 バケモノは一歩一歩俺に近づいてくる。俺は身体中痛みながら持っていた金属バットで振りかぶる。腰を打ち、立てないながら必死で少女を庇う。


「来いよ! こっち来いよ!」


 俺はバケモノの気を引き。少女を逃がそうとする。数分だろうがそれで良い。自分が逃げるのはその後だ!! 俺は覚悟を決めた。


 その時、空から何かが飛来した。白と赤の服。服の内側からでも分かる。巫女服の少女。ピンクツインテール髪のその子は俺の頭の上のコンクリートの塀に立った。今はどうでも良いが。

 パンツ丸見えだぞ??


「また来たわね!! 異界の者よ!!」


 何かこう条文臭い事を言っている。ツインテールなのでツンデレくさい。少女は袴の裾から箱を取り出す。白い小さな箱。箱には和式の模様が施されていた。和紙の箱である。


「行くわよ!! 封印術!! つづら結界!!」


 バケモノは大きな声を上げながら石垣の上の少女に腕をあげる。鉤爪の腕を下ろされるも少女は右手で印を踏むとバケモノは振り上げた腕を下ろせない様だった。バケモノは箱に吸い寄せられていく。そのままバケモノは小さくなって白い箱に吸い込まれてしまった。


 コトンパタン。


 白い小さな箱は閉じる。ツインテピンクは右手で印を踏み、自慢げに箱を裾に入れる。そして両手を腰にあてる。その間も俺の真上。石垣でふんぞりかえる。ああ、青のストライプか。俺はそんな事を思いながら。


「ふふん。生け捕り成功!! お疲れさーーん。」


 俺は楽しげな女の子にイラつきながら声をかかる。痛え。まだ俺動けねえか。


「おーい。」


「アレ?? 平次じゃ無い??!! ごっめーん!! 急がないと!!」


「おい!! あっちに被害者の女の子が居るんだが??!! 保護してくれねえか?? 俺は大丈夫だから。」(お前誰?? 青いストライプさん)


「オッケー!! 後で学校で説明するから!!」


 やはり学校かクラスの誰からしい。変身少女ってやつか?? 髪の毛ピンクだと目立つなあ。


 化け物に親が喰われた少女は無事保護された。俺は自転車を押しながら這いつくばって高校に向かう。いやあ。色々有りすぎてしんどかった。


 こうして俺江方平次の化け物退治の物語が始まる。



              終わり。

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巫女箱師マナちゃん 亀岡たわ太 @kameokatawata

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