最強の力/ファイナルスプライシング
「さて、見せてやるか、ティファ」
「えぇ。いっちょやらかしましょうか。ユニバースイグナイター、両腕部、両脚部、シールドパージ! ドッキング形態に移行!」
サブシートに座ったティファが目の前にホロウィンドウを開き、ユニバースイグナイターの操作を行う。
製作者権限でドッキング形態。両手両足をパージした形態へと移行する。
「オーバースプライシング改、ドッキングシステム遠隔起動! ドッキングシークエンス!」
そしてオーバースプライシング改のバックパックの偽装装甲が展開し、ドッキング用の装置が姿を現す。
ユニバースイグナイターは更に変形し、オーバースプライシングのバックパックを包み込むように変形。コクピットがユニバースイグナイターのバックパック側へと移動し、ドッキングする。
「コントロールをオーバースプライシング改からユニバースイグナイターへ譲渡!」
「動力炉直結。ライフル追加武装接続。システムチェック開始。ハイパードライブシステム、イグナイトシステム、ファイナルブーストシステム、全システムオールグリーン! 起動条件クリア! 製作者による全システム権限を一時的に搭乗者へ移行!! オールロックフリー!!」
そして、最強の一角が、目覚める。
「目覚めろ! ファイナルスプライシングッ!!」
その名は、ファイナルスプライシング。
ネメシスの終着点であり、スプライシングの最終進化。
それが起動した。
「最初から全力だ! 臨戦機能、決戦機能、リミッター全開放!! 起動しろ、
F-V.O.O.S.T。ファイナルスプライシングの力が解放される。
全身から光の翼が展開され、さらにイグナイトシステムの光をも纏い。
そして、バックパックとなったイグナイターからは、今までの光の翼よりも倍は長い光の翼が展開される。
神々しいその翼に、それを目の当たりにした戦場が静まり返る。
光の翼の大きさは、凡そネメシス1.5機分。それが羽ばたき、スプライシングは光とともに移動する。
「ハイパードライブ!!」
直後、ハイパードライブ。
一瞬でティウス王国軍の中心から、アイゼン公国軍の中心へ。
しかし、アイゼン公国軍もバカばかりではなく、突っ込んできたスプライシングを即座にハチの巣にしようとして。
「邪魔だ!」
光の翼が一瞬伸び、銃口を向けていたネメシスが一気に蒸発した。
その光でようやく敵襲に気が付いたネメシスたちが銃口をスプライシングに向ける。
「シヴァカノン、発射!」
その瞬間、シヴァカノンが。スプライシングの持つシヴァとユニバースイグナイターの盾が合体したソレが火を噴き、銃口を向けたネメシスが消し飛んだ。
ラーマナMk-GXにも搭載されたその暴力が再びアイゼン公国軍を襲う。
これ以上はやらせないと次々とアイゼン公国軍のネメシスが弾を撃つなり近接戦闘を仕掛けるなりで止めに来るが、その全てを光の翼だけで防ぐ。
遠距離はシヴァカノンで。近距離は光の翼で。全ての敵を撃ち落としていく。
「流石に数が多いか……なら、行け、セパレート達!!」
しかし、流石に敵の数も多い。
故に、手数を増やした。
従来のセパレートウィングこと、セパレートウィング改。そして、ユニバースイグナイターのセパレートウィング弐式。
2つのセパレートウィングを放ち、戦場に解き放つ。
しかし、流石に系統の違うウィングを使いこなすのは頭が疲れる。若干だがファイナルスプライシングの操作がおざなりになってしまったが、ふとその負担が軽くなった。
セパレートウィング弐式の分だ。その分の負担が軽くなった。
その心当たりである相棒の方を見ると、彼女は視線の先で動くセパレートウィング弐式に集中しながらも、少しだけトウマの方を見て笑った。
「弐式の方はわたしが受け持つわ。トウマは改の方と、機体の制御に集中して」
どうやら途中でセパレートウィング弐式のコントロールを勝手に奪ったらしい。
一言欲しかった気もするが、それで不利益があった訳でもないし、むしろ有り難い。これでいつも通りに操縦ができる。
「助かるよ。そんじゃ、改めて行ってこい!」
光の翼を展開したセパレートウィング改が敵陣を掻き乱す。
弾は効かず、近接戦は光の翼で蒸発させられる。そんな悪魔のような無線兵器が二基。更に、そのサポートを行う無線兵器が二基。
セパレートウィング弐式の方はもうすぐ弾切れだが、改の方はまだまだ持つ。
アイゼン公国軍にとっては悪夢のような時間だろう。
『クソッ、貴様のような傭兵風情がぁ!!』
単騎による暴力で敵陣を崩壊させていく。その最中、どこかで見たことあるような機体が突っ込んできた。
合計で10機。
はてさて、どこで見たっけか。
「まだ死んでなかったか。運がいいやら、悪いやら」
「悪運だけはってやつじゃない?」
「だな。で、どうする?」
「どうするも何も。お世話になったお礼をたっぷりとしてあげないと」
「了解。じゃあ、怪我しないように構えてろよ、ティファ」
「もちろん」
放たれるエネルギーマシンガンの弾を全て光の翼で防ぎながら、宙域を舞うように飛ぶ。
ばかすかと弾を撃ってきているが、エネルギーマシンガンはマガジン式。どうしても弾切れのタイミングは出てくるし、リロードのタイミングも出てくる。
故に、敵の内一機がリロードに入った瞬間、今まで下がっていたが故にかかっていた慣性を殺しながら前進。
リロード中の機体の目の前に躍り出た。
『は、やっ!?』
「勝てるとでも思ったか? 残念な頭だな。この間予備機に乗った俺にもボッコボコにされたろ」
『貴様ッ!!』
目の前で挑発すれば、ビームセイバーを振るってくる。
その攻撃を、光の翼で腕を根本から吹き飛ばして無力化する。
「腕の差に機体の差。全部でお前達の負けだ。だから、死んどけ」
ファイナルスプライシングが手を翳した瞬間、全身の光の翼が敵機を切り刻み、切り刻まれた機体が爆散した。
見えはしなかったが、コクピットも無差別に切り刻んだため、中のパイロットは死の直前に己の体が何分割にもされる瞬間を味わっただろう。
『よ、よくもぉ!!』
「威勢だけはいいな。威勢だけは」
「けど、その背中。信じられないほど隙だらけ」
更に一機突っ込んでくるが、その背中をセパレートウィング弐式のレールガンが撃ち抜く。
コクピット付近を撃ち抜かれたその機体はそのまま爆散する。
「さて……このままぷちぷち潰してるんじゃ、他の機体には逃げられちまうな。って事で!」
ファイナルスプライシングの出力を一気に上げる。
上がっていく出力に呼応するように光の翼は巨大化する。
あくまでも一時的な巨大化であり、長時間そのままにしておけばF-V.O.O.S.Tの解除が必要になるが、一時的であれば問題ない。
「蹴散らせ!!」
巨大化した光の翼を振るう。その範囲は、今にも逃げ出そうとしている残り8機の敵を纏めて蹴散らしてもなお余る。
巻き込まれた機体はそのまま爆散。なんとか範囲外に逃げられた機体が居たとしても、即座に追撃のウィングにより爆散する。
その圧倒的なまでの暴力は、戦場にいる全ての軍人を恐怖させるのには十分だった。
「さて、余計な時間を使ったが……アブファルはあっちか」
そのままファイナルスプライシングはゆっくり。ゆっくりと周囲の敵を蒸発させながらアブファルの船へと向かっていく。
「トウマ、ハイパードライブの反応。3時の方向」
「あれだな。撃ち落とすぞ」
「じゃんじゃんやっちゃって」
「了解っと」
その光景に、もう勝つことは無理だと撤退しようとした船が居た。
が、直後にハイパードライブの反応を察知したファイナルスプライシングにより撃ち抜かれて爆散した。
あまりにも無情な光景に逃げようとする機体や船が続出するが、それでもその全てを撃ち抜いていく。
『ば、化け物だ……!! ええい、我が艦は撤退する!! ハイパードライブ、急げ!! グラーフ少佐、お前は殿だ!! 我が艦が逃げる時間を作れ!!』
『……いいでしょう。どうせ、無駄ですが』
アブファルの船がハイパードライブに入る。
だが、無駄だ。
「ティファ。ハイパードライブアンカーをセットしてくれ。ここの敵を殲滅したら追うぞ」
「りょーかい。はい、設定完了」
もうこれでアブファルは逃げられない。
さぁ、後は。
『これまでか』
「よう、グラーフ少佐殿。調子はどうだ?」
****
あとがきになります。
今回はファイナルスプライシングについてです。
ファイナルスプライシング
スプライシングの最終形態。
ユニバースイグナイターとオーバースプライシング改が合体したスプライシングの最後の形態。
この世界でたった2機の合体ネメシス。動力炉がスプライシング、ラーマナ、ユニバースイグナイターの3つ分あるため、単純な出力で他の機体を圧倒する。
各種V.O.O.S.Tは継続して使用可能だが、追加されたイグナイトシステムと、それと併用可能な
F-V.O.O.S.Tは従来のO-V.O.O.S.Tの出力を単純に倍加した、シンプルながらも強力な強化。時間制限は無し。
また、光の翼はある程度伸縮可能であり、ハイパードライブも使用可能であるため、敵対したら逃げる事もままならない。
完成直後にレイトと行った模擬戦では、10戦中7勝を勝ち取った、まさに化け物機体。レイト曰く少しは加減しろこの馬鹿。
名前はファイナルダンクーガが元ネタ。
武装はシヴァカノン、ビームセイバー、マイクロミサイル、セパレートウィング×2、セパレートウィング弐式×2。
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