流星突貫

「ああああああああああ無理無理無理!! 死ぬ死ぬ死ぬ!! 密度すんごいんだからもう!!」

「彼女、案外余裕ですね?」

「叫ぶ余裕があるんなら大丈夫そうだね」

「なんなのこのメイドさん達!? 肝座りすぎじゃない!!?」


 サラが暴れ始めてからしばらく。ミサキも敵陣にハイパードライブし、そのまま目的の船に向かっていた。

 が、突如として現れた、停止勧告を受けても止まらないネメシスなど普通に撃ち落されるに決まっている。

 故に行われる四方八方からの攻撃にミサキは泣きべそをかきながらも何とか攻撃を避けつつ、目的の船に向かって全力で飛んでいた。

 まるで360度全てに目があるかのような緻密な回避にメルとセレスは驚いているが、やっているほうは必至である。

 何せさっきからずーっと直感的な何かがビンビンに反応しまくっているのである

 止まったら死ぬ。あっち行ったら死ぬ。そっち行っても死ぬ。こっち行くしかない、と。もう頭の中の思考回路がやかましくて仕方ないうえに操作が忙しい。

 時には無理矢理機首となっている盾で攻撃を受けないと詰むような場面まで出てくる始末。

 トウマやサラでもこの弾幕を無傷で切り抜けるには、敵を撃破するほかない。

 純粋な回避能力でここまで来れているのはミサキの天性の才能によるものだ。

 

「あーもう無理無理!! 耐えられないから突っ込む!!」

『え?』

「イグナイトシステム、イグニッション!! 格納庫に頭から行くからケガしないでね!!」


 スペースイグナイターがイグナイトシステムを使って一気に加速する。

 目的地は敵船格納庫。

 閉まっているが……まぁ、装甲ごとぶち抜けばいいだろう。

 

「ちょっ、穴開けて大丈夫なのあの船!?」

「ああいう軍事船には穴が開いても専用のボールが展開されて穴を塞ぐようにできています! 私達がコクピットを飛び出してから宇宙に吸い込まれなければ問題ありません!」

「よく分かんないけどもう無理! どうにでもなーれ!!」


 イグナイトシステムを使って強度を底上げしたスペースイグナイターが格納庫の壁をぶち抜く。

 居住区などを傷つけないギリギリの角度で突っ込み、そのまま落下するほどの勢いで格納庫に変形しながら着艦する。

 ミサキの腕とスペースイグナイターの性能が無ければ今頃機体はグシャッと潰れて爆発炎上していただろう。

 しかも、強制着艦の影響で周囲の人やら物がぶっ飛び、格納庫の壁がぶち抜かれたことにより吹き飛んだそれらが宇宙に吸い出されていく。

 はっきり言って地獄絵図である。

 

「えっと、これで姿勢制御はオン、固定よし! 二人とも、今なら大丈夫!」

「分かりました。セレス、行きますよ。ヘマはしないように」

「そっちこそ!」


 ようやく船に空いた穴を塞ぐ粘着球が射出され始めたタイミングでメルとセレスがスペースイグナイターのコクピットから飛び降り、そのまま凄い勢いで目的の部屋まで走っていった。

 ミサキはそれを見送ると、まだ無事なネメシスに目をやり、下手に動かされる前にビームセイバーを抜いてなるべく丁寧にコクピットだけを貫いて焼く。

 これで後ろから急に起動したネメシスに襲われる、ということもないはずだ。

 

「あとは格納庫に入ってくる敵を撃つだけ……」


 スペースイグナイターの武器、エネルギースナイパーライフルを構えつつ、ディフェンダーウィング弐式を展開して自分が突っ込んできた格納庫の扉を見る。

 すでに周りの非戦闘員は退去をしており、暫くしたら生身の人間が何とかスペースイグナイターに取り付いて無力化しようとしてくるだろう。

 だが、それはイグナイトシステムのエネルギーによりかなわない。

 ゆえに、集中すべきは正面。格納庫を開き、中に入ってくるネメシスだけだ。

 

「お願いだから早く……」


 粘着球により穴が塞ぎ切り、空気の流出が止まったのを確認してから、ミサキはつぶやくのであった。



****



Q:ミサキさんどんな角度で突っ込んだの?

A:格納庫から見て斜め45度あたりの角度からぶっ刺さるように突っ込みました。トウマ、サラ、レイトが同じことやったら普通に着地ミスって死ぬ感じのスイカバートライでした。そりゃサラも見てて心配しますよ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る