託された力/ラーマナMk-GX

 姿を消したラーマナが次に姿を現したのは、敵陣のど真ん中。

 襲撃予定の船から少し離れた所の、ど真ん中。

 

『……ん? なんだ? 白い機体……?』

「敵よ、残念ながらね」


 そして、近くにいたネメシスをビームセイバーで一刀両断する。

 それによりようやくアイゼン公国軍は、自陣に敵機体が現れたことに気が付いた。

 

『て、敵襲!? あの白いネメシス、敵だ!!』

「通信阻害開始。さーて……暴れますか!!」


 銃口が一斉にラーマナの方を向き、エネルギーマシンガンが放たれる。

 それを避け、手に持ったライフルの銃口を。盾が取り付いたことにより通常のライフルよりも遥かに巨大になったソレを敵に向ける。

 

「生態認証! 緊急時プロトコルにより製作者及び母艦からのセーフティーを一時的に無効! 搭乗者権限によりセーフティー解除、確認!」


 銃口に光が集う。

 ラーマナが持つのは、オリジナルのシヴァ。アイゼン公国軍に見せつけた、エネルギー兵器の暴力の象徴。

 その威力は、既に。

 当時を圧倒的に超えている。

 

「シヴァカノン!! ぶちかませ!!」


 シヴァカノン。

 大型船に取り付けられた、過剰威力のエネルギー兵器。

 それと同じ名を冠する武器から光が放たれる。

 放たれた光はあまりにも太く、そして眩しく。銃口の先から逃げようとしたネメシスが。その後ろで盾を構えていたネメシスが。その周囲にいた何機ものネメシスが。その先に居た船が。

 射線というにはあまりにも太すぎるそれに巻き込まれていた全ての機体が、その一撃に飲み込まれ、蒸発していった。

 

『な、なんだ今の光は!?』

『ゆ、友軍が! 友軍機が纏めて溶けた!?』

『あの機体……ま、まさか、テラフォーミング船団が雇っていた、あの規格外の……!?』

「悪いけどこいつは連射できるのよ。だから、死なないように精々逃げ回りなさい!!」


 そして連射されるシヴァカノン。

 一射ごとに何機ものネメシスが巻き込まれ、蒸発していく。

 明らかにネメシスという枠組みには収まらないその火力に、訓練された兵士であろうとも恐怖を感じる。

 しかし、それでも生き残るためには抗う。

 

『くそっ、全機アレに集中砲火だ!! 撃たれる前に落とせ!!』


 エネルギーマシンガンによる飽和射撃。

 最早撃たれる前に撃つ。誤射したとしても自分は生き残る。そんな気持ちすら籠った、味方機を一切気にせず、外した後の事も気にしない飽和射撃。

 だが、ラーマナにそんなものは通用しない。

 

「イグナイトシステム、アクティブ!!」


 イグナイトシステムが発動する。

 イグナイターに搭載されたそのシステムは本来、エネルギー兵器の弾は弾けない。

 だが、それはイグナイター単騎だった時に限る。

 ラーマナと動力炉を直結して出力が増したイグナイトシステムならば、その限りではない。

 ラーマナが纏った青色の光は迫りくるエネルギー兵器の弾丸を無力化し、消し飛ばす。

 

『なっ、なんで効かない!?』

『当たってる!! 当たってるんだぞ!!?』

「さて、じゃあ駄目押しいきますか。ここまでやればミサキも安心して船に行けるだろうしね」


 そして、更なる追加機能を。

 動力炉を直結したからこそ可能なソレを、切る。

 

「決戦機能開放、リミッター解除!」


 イグナイターの翼から光が放たれる。

 それが広がり、一対の翼と成す。

 そう、これは。

 

「L-V.O.O.S.T、アクティブ!!」


 L-V.O.O.S.T。本来、ラーマナには発動できなかった最強の力。

 それが、イグナイターの翼から放たれる。

 これこそがラーマナMk-GXの真の姿。

 増加装甲+イグナイトシステム+L-V.O.O.S.T。最強の守りと最強の矛。それらが組み合わさった、埒外の力。

 ティファは言った。持たせちゃいけない奴に持たせちゃいけない物を持たせてしまった、と。

 トウマは言った。元愛機が魔改造の末に原型なくなっちゃった、と。

 サラは言った。もうどうにでもなーれ、と。

 レイトは言った。ふざけんなナーフしろこのチート機体(10戦5敗)、と。

 サラは言った。これに5割勝てる時点でお前の方がイカれてんだよ、と。

 製作者とそのパイロットたちすら匙をぶん投げた、最強。

 その一角が、このラーマナMk-GX。

 

『光の、翼……!?』

『や、ヤバい……俺知ってるんだ、あの光の翼……!! 無理だ、勝てるわけがない……!! あの翼は害虫の針すら簡単に防ぐんだぞ……!?』

『ぜ、全機撤退、撤退!! アレは無理だ!!』

『馬鹿者、逃げるな、戦え!! 逃げれば銃殺刑だ!!』

『無茶を言うな!! どうやってアレを倒せばいいんだ!! エネルギーマシンガンすら効かなかったんだぞ!!?』

『ならばもう一度だ!! とっとと撃て、アレを落とせ!!』


 恐らくどこかの船に乗っているのであろう指揮官からの言葉に、兵士たちは半狂乱になってエネルギーマシンガンを放つ。

 その弾を全て光の翼で防ぎきる。

 

「出力正常。タイムリミット無し。なら、後は蹂躙するだけ!!」


 光の翼が振るわれる。

 それだけで何機ものネメシスが灰燼と化す。

 更にシヴァカノンにより船が一撃で貫かれ、爆散する。ネメシスが蒸発する。


「まだまだぁ!! アーマードブラスト、装甲展開!! 全兵装オンライン!! ターゲットマルチロック!!」


 更にそれだけに限らず、ラーマナの全ての武装が一斉に展開される。

 シヴァカノン、右肩部エネルギーキャノン、シールド外付けエネルギーガトリング、マイクロミサイル。そして、背部のギャラクシーイグナイターが動き、その背部の二連レールキャノンまでもが。

 明らかにネメシス単騎に詰め込むには過剰な武装が。ネメシス1部隊を用意しても通用しないであろう火力が、一斉に構えられた。


「オールウェポンフルバースト!! ブチかませ、ラーマナ!!」


 シヴァカノンの光が宇宙を貫き、エネルギーキャノンの弾が炸裂し、ガトリングの弾が巻き込まれたネメシスを蜂の巣に変え、マイクロミサイルがロックオンした敵を次々と撃ち抜き、レールキャノンが逃げようとした敵を背後から撃ち貫く。

 トウマを持ってしてハイマットフルバーストよりひでぇや、と言わせるその過剰火力は目の前にいたネメシスや船を一気に落としてしまった。

 しかもレールキャノンとミサイル以外はエネルギー兵装。つまり、多少のリチャージ時間があれば無限に撃てる。

 まさに地獄の光景だった。

 

「まだよ。行きなさい、フェンサー達!!」


 その地獄に、更にフェンサーウィングとフェンサーウィング弐式が投入される。

 フェンサーウィングは狙い違わず敵ネメシスのコクピットを貫き、フェンサーウィング弐式は船のブリッジやネメシスの胴体を真っ二つに切り裂く。

 攻撃は届かず、敵の攻撃はその全てが防げない。

 正しく地獄。地獄の戦場だ。

 それを紡ぎながら、サラは視線を一つの船に向ける。

 この地獄がわざと届かないようにした、一つの船を。

 

「後は頼んだわよ、ミサキ」


 その船に、一条の流星が突き刺さった。

 ……大丈夫だよね、あの角度。いや、ホントに。



****



 あとがきになります。

 実はイグナイターを出してからすぐ、コメントで合体するんだな、みたいなコメントを書いてくださった方がいたんですよね。

 なんでマジモンの預言者が出現してんの??? マジであの時ビビりました。

 それはともかくとして、今回はサラの最終機体、ラーマナMk-GXについてです。


ラーマナMk-GX(ギャラクシークロス)

ラーマナの最終形態。

ラーマナMk-X・改とギャラクシーイグナイターが合体した、ラーマナの最終形態。

両手足をパージしたギャラクシーイグナイターをバックパックに接続し、純粋に機動力と火力を増加した姿。

ラーマナが貫いてきた基礎スペックの向上の果てとなった姿。

イグナイトシステム、L-V.O.O.S.Tが使用可能であり、ただでさえ基礎スペックが高いラーマナの基礎スペックが更に高くなり、アーマードブラストもあるため、相当堅牢な機体に仕上がっている。

また、ラーマナMk-Xに搭載されていた実弾武装は全てエネルギー兵装に強化改装されているため、害虫を相手にしても圧倒的な優位性を誇る。

武装はシヴァカノン、右腕部内蔵ビームセイバー、ビームセイバー、右肩部エネルギーキャノン、シールド外付けエネルギーガトリング、マイクロミサイル、背部2連レールキャノン、フェンサーウィング×2、フェンサーウィング弐式×2

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