漆黒の裏で輝く光

 トウマとティファの救出作戦。

 それはサラが敵船の艦内図を手に入れたことにより、次の戦場で仕掛けることとなった。

 やる事は、至極単純。

 

「機兵団とレイトは他の戦場に赴いて一旦戦況をある程度動かしてきてくれ。それが終わったら、機兵団とレイトでトウマ君の足止めを行う」


 まずは一番の障害となるトウマの足止め。

 ティファを救出するのにトウマが邪魔してきたら元も子もない。

 今回の作戦、間違いなくティファの救出は乱暴な物になる。それこそ、ティファが捕らえられている船で一度か二度は爆発が起きるだろう。

 しかし、それでも手段はそれしかない。故に、やるしかない。

 だからこそ、今はティファを守るために戦っているトウマと騎兵団、レイトが戦い、彼の注意を引く。

 そうなれば後は。

 

「そして、サラ。お前は敵船の近くにハイパードライブし、周囲の敵機を足止め」

「わかってる。トウマにできたんだもの。やってやるわよ」


 敵陣の機体は、サラが一任する。

 なんとか救出作戦が行われている間、敵陣の機体を全てサラが相手取る。

 負担は大きいが、それでもトウマにだってやれたのだ。サラにだってできない理由は無い。

 そして、最後。救出部隊は。

 

「ミサキ嬢。君が突入部隊、その旗頭だ」

「は、はい……!!」


 ミサキとスペースイグナイター。

 彼女が、サラでも抑えきれないであろう敵陣の攻撃の中を掻い潜って敵船の格納庫へと突入する。

 そのために多少の訓練は受けたし、固定砲台になって弾を撃つ程度はできる。それに、スペースイグナイターにはディフェンダーウィング弐式。無線で動く盾もある。それで自身の身を守りながら、格納庫で待ち、敵が来たら守りを重視して耐久戦を仕掛ける。


「まだ子供の君を戦場に送り出すなんて、貴族失格だが……君しかいない。頼めるか?」

「だ、大丈夫。で、です。あたし、お兄さん達に助けてもらったから……だから、今度はあたしの番。絶対に助けるよ。……あ、です!」

「敬語はまた今度練習だな。そして、肝心の救出部隊は」


 司令官でもあるミーシャの視線。それがミサキの横。

 今回の助っ人に行く。

 

「メルさん、セレスさん。お二人に任せた」

「承知いたしました。トウマさんは間接的にビアード家の助けとなってくれた方です。なんとか敵船に潜り込んでお二人を救出しましょう」

「今回ばかりは特別だって旦那様から言われちゃったし、お金も結構貰えるみたいだからね。あの子には船を運んでもらって、手数料も無しにお金を渡してもらった恩があるし、頑張るよ」


 救出部隊。

 それは、カタリナの護衛でもあるメル。そして、本来ならビアード家の関係者には近寄れないはずのセレス。

 メルはビアード家の当主から、どうしてもメルを貸してほしいとハインリッヒ家から頼まれたから、という理由で派遣され、セレスはメルを連れて行くのなら腕に自信のある彼女を連れて行くべきだ、と紹介された。

 丁度救出対象は二人。ならば、メルとセレスを派遣すれば少しでも作戦成功率は上がるとしてミーシャは二人を雇い、救出部隊に組み込んだ。

 

「にしてもセレス。あなたはこういう仕事、もう受けないと思っていましたが」

「あの後になって恩義に報いる、って事を覚えてさ。自分の事を助けてくれた人たちを、助けられるのに見捨てるって……すっごい、嫌だなって。だから、やってみようって」

「そうでしたか。なら、再びツーマンセルですね」

「うん。改めて、よろしくね」

「こちらこそ」


 この2人だけで人数が足りるのか、と思う者もいるかもしれないが、これ以上の人数は逆に彼女たちの足枷になる。

 今回の作戦は迅速に行わなければ、人質が何をされるか分かったものじゃない。故に、可能な限り迅速に動ける2人が好き勝手に動ける状況でなければならない。

 少数精鋭による敵陣の一点突破。それこそが2人に与えられた任務だった。

 

「では、作戦はアイゼン公国軍の侵攻に合わせて行う。サラとミサキ嬢はハインリッヒ機兵団、もしくはレイトが時間稼ぎを行ったら連絡船から出撃。サラが先にハイパードライブし、敵陣をかき乱してからミサキ嬢がハイパードライブし、敵船へと突っ込む。サラは極力ミサキ嬢が乗り込んだ船に敵が行かないように気を付けてくれ」

「うーんタスクが重い。けど、分かったわ。なんとかする」


 けど。

 

「そのために、ちょーと用意だけしてくるわ」


 ちょっとばかり大人げないが、本気を出すとする。

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