仲間同士の望まぬ戦い
サラの参戦。それを確認した直後、ギャラクシーイグナイターからのミサイル。
ペイント弾なんかではなく実弾のソレをエネルギーライフルを連射して迎撃し、今度は逆にトウマが残りのミサイルを全てギャラクシーイグナイターへ向けて放つ。
『ミサイル、やっぱり残してあったわね……! 迎撃しなさい、セイバーブーメラン!!』
ギャラクシーイグナイターに乗ったサラはソレをセイバーブーメラン、フェンサーウィング弐式を持って撃ち落とす。
ミサイルを迎撃したフェンサーウィング弐式は当然のように無傷。ミサイルの中を潜り抜けたフェンサーウィング弐式はそのままユニバースイグナイターへと肉薄する。
「クソッ!!」
一直線に向かってきたフェンサーウィング弐式をビームセイバーで打ち払い、即座に変形。
ギャラクシーイグナイターとフェンサーウィング弐式に追われる展開となりながらも、なんとかスタンドマニューバやバレルロール。真横への急速変形解除を用いてギャラクシーイグナイターの猛攻から逃げる。
歯噛みしながら回避を繰り返し、トウマは分かっていたことだ、と自分に言い聞かせる。
セパレートウィング弐式が無いユニバースイグナイターとギャラクシーイグナイターでは、ユニバースイグナイターの方が圧倒的に不利。
その理由はやはりフェンサーウィング弐式の存在。イグナイトシステムにすら追従する速度で戦場と飛び交うブーメランはセパレートウィング弐式で迎撃しなければいつまでも追ってくる。
常に全身刃の格闘特化機体2機とランカー並みの腕を持った可変機使いが追ってくるという状況。これはトウマであっても防戦一方にならざるを得ない。
そんなトウマの心情を知ってか知らずか。いや、知らずに無線の回線がこじ開けられる。
『貴様、さっきから何をしている! そんな機体に構わず、とっととティウス王国軍を攻撃しろ!』
アブファルの声だ。
だが、今はそちらに意識を余計に割くことはできない。
トウマとサラの直近の模擬戦による成績は6:4。サラは既にトウマ並みの腕を持つ、この世界で産まれたパイロットとしては規格外と呼べる力を手にし、ネメシスオンラインのランカーが相手であろうと、レイト以外になら5割の勝率をもぎ取ってても何らおかしくないパイロットに成長している。
そんな彼女を相手にしながら他の機体の相手をするだなんて、できるわけがない。
「チッ! 無茶言ってんじゃねぇぞ! 俺とアイツの腕はほぼ互角、こっちの消耗がある以上こっちの方が不利だ! 敵陣に潜り込んで混乱を生みながら飛んでいるだけありがたいと思え!!」
『なんだと、貴様!!』
『アブファル大佐。あの機体は彼の乗る機体と同規格の機体。つまり、アレに乗っているのはサラ・ハインリッヒ伯爵令嬢かと』
『そう言う事か……ええい、暫くはその機体の足止めをしていろ!!』
「足止めったって……」
『あたしを相手に随分な事してくれるじゃない、トウマ!!』
サラに通信が繋がっていないが故に、サラからしてみればトウマが勝手に独り言を話したと思える状況。
そんな、誰かとの会話に意識を割いた状態で十全に相手できる程、サラは優しい相手ではない。
エネルギーライフルとフェンサーウィング弐式で退路を可能な限り断ち、トウマが直線状の動きしか取れなくなった瞬間に全速力でサラは肉薄。
両手にフェンサーウィング弐式を持ち、短刀代わりとしてトウマに斬りかかった。
『だああああああああ!!』
「く、っそがぁ!!」
その攻撃に何とか反応し、一撃目はビームセイバーで、もう一撃は盾で何とか弾く。
『まだぁ!!』
「させるか! ブースター!!」
『眩しっ!?』
そこから更に繰り出される追撃を、その場で上昇して回避。更に背面のブースターを正面、ギャラクシーイグナイターのメインカメラに向け、一気にブースターを吹かす。
即席の目くらました。
それによりサラの動きが止まる。
その隙を逃さずにトウマはビームセイバーを振るう。
が。
「…………くぅっ!」
ビームセイバーが当たる直前に、一瞬だが勢いを緩めてしまった。
その一瞬でサラは態勢を立て直す。
『そんな気概でぇ!!』
ビームセイバーを手に持ったフェンサーウィングで弾き飛ばし、更に近距離で一気に加速してユニバースイグナイターのコクピットを蹴り飛ばした。
致命打にはならないが、パイロットにはダメージが行く。
「ぐああぁぁ!!?」
『引き金を引いたんなら覚悟を決めなさいよ!! 今のあんたじゃ、誰一人だって守れやしない!!』
戦況は完全にサラが優勢。
完全に殺す気のサラと、そんなサラを相手にどこか一歩引いた状態で戦ってしまうトウマ。
そうなるのも当然と言える精神状態だった。
だが、だからこそ。サラは己の目論見通りに戦況が進んでいる事。己達が立てた作戦はあと一歩、相手側から踏み込まれる事で完遂できることを理解する。
「……お願いだから、先にくたばらないでよ、トウマ」
ギャラクシーイグナイターの中で、サラは通信に乗らない程度の音量で呟いた。
――サラ単騎による戦場への介入及び、トウマの足止めと戦闘。これは、ハインリッヒ家で立てた、唯一のトウマとティファの救出作戦の序章だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます