いつも通りの依頼

 この日、ティファ達はアイゼン公国からの依頼を受けてアイゼン公国領内を訪れていた。

 依頼の内容は、あの害虫の駆除だ。

 どうやら一部エリアにおける害虫の駆除が間に合わなかったらしく、今にもその被害が他のコロニーや惑星へと及びそうなのだと言う。

 今回は民間への危機があるためか金払いも良く、ティファ達は楽な仕事だと内心思いながらも該当の宙域へ向かっていた。


「さーて、そろそろハイパードライブも終わるわ。2人とも、イグナイターに乗っておいて」

「おう」

「りょーかい」


 宙域では既に害虫による被害が報告されている。

 かつてのようにハイパードライブ直後に奴らが現れ、こちらに攻撃を仕掛けてきてもなんらおかしくはない。

 故に、予めパイロットの2人にはイグナイターに搭乗しておいてもらう。

 ティファが作り上げたこの世界唯一のバリア装置。あれを改良してバリアを一部だけ解除できればよかったのだが、それはできなかった。

 あのバリア装置は、そもそもバリアは球体状にしか展開できない、という根本があってこその装置だ。その根本を弄るのなら、全く新しい技術体系を一から作り上げる必要がある。

 ティファならそれも可能だろうが、この1年半でそれを成すことは残念ながらできなかった。

 故に、バリアに対して不安は持ちつつも、害虫が確認された宙域へと移動する必要がある。

 すぐに見つかればいいのだが、見つからなければ依頼はキャンセル。この数日の時間が完全に無駄となる。

 それだけはちょっと勘弁してもらいたい。

 

「さて、何が出るかしらね……」


 流石に仮称:女王融合体が沸いているのだけは勘弁だが。

 そんなあり得ないであろうことを考えていると、ハイパードライブが終了した。

 ハイパードライブ直後の宙域には害虫はいない。最大望遠でカメラの映像をモニターに表示するものの、やはり見つからない。

 

「やっぱり害虫は探すのが厄介ね……!」


 害虫はこの宙域に置いて、レーダーに引っかからないという特性を持つ。

 いや、害虫を引っかけるレーダーが存在していない、という方が正しいか。

 ある程度。それこそ、最大望遠よりも少し遠い位置までの距離に存在する有機生命体を探知するレーダーは存在している。このレーダーを用いれば害虫を引っかける事も可能ではあるが、そもそもそれぐらい近いのであれば、カメラによる目視確認を行った方が早い。

 そもそも論、そのレーダーは事故を起こしてノーマルスーツの状態で宙域に放り出された遭難者を探すためのレーダーであるが故に、害虫探しには適していないという問題もある。

 それ故に、害虫探しは結構難航しやすいのだ。

 

「まぁ、そうなるわよね……トウマ、サラ。出撃準備。今から宙域図にピンを刺すから、2手に分かれて探すわよ。トウマは出撃してからすぐにこの船の護衛について。サラは出撃したらピンに沿ってハイパードライブで移動して」


 こうなればティファ達は最大限自分たちの足を使って害虫を探すしかない。

 目撃地点を基にある程度害虫の動きを予測し、資源惑星やコロニーの側にピンを立てる。

 この地点を周っていき、害虫を探していくのだ。

 腕で劣るサラが一人で害虫を探すのは、単純にサラが宙域という場でのアレやコレに慣れているからだ。戦闘においてはトウマが上だが、それ以外の面ではサラに軍配が上がりやすい。

 それに、船が囲まれた場合、サラだけでは万が一があり得る。トウマでもあり得るが、トウマのユニバースイグナイターなら機動力もあるので、ある程度はどうにかなる、という寸法だ。


『了解』

『こればっかりはね。んじゃ、トウマ。今回はお先』


 格納庫でギャラクシーイグナイターが変形したままハンガーに吊るされ、専用カタパルトとドッキングする。

 ハイパードライブでの単騎移動を即座に行う場合に使うよく使う物だ。

 

『ギャラクシーイグナイター、サラ・カサヴェデス。行ってくる!』


 変形したままのギャラクシーイグナイターがカタパルトにより押し出され、宙域へと射出される。

 それと同時にサラはハイパードライブを始動。そのまま光を纏ってカメラから消えていった。宙域図に表示されたギャラクシーイグナイターの現在地は光速を超えた速度で移動している。

 そして、今度はユニバースイグナイターの番。

 ユニバースイグナイターも専用カタパルトとドッキングし、既にエンジンに火を入れている。

 

『よし。トウマ・ユウキは、ユニバースイグナイターで行く!』


 カタパルトが火花を放ちながらユニバースイグナイターを射出する。

 ユニバースイグナイターはそのまま船の護衛につき、船と速度を合わせながら航行する。

 

「よし、それじゃあこのまま移動するわよ。トウマ、アンカーを」

『了解。ハイパードライブアンカー、設定完了。ハイパードライブ合わせ、よし。いつでも行けるぞ』

「おっけ。んじゃ、とっととあっちこっち行ってお仕事済ませちゃうわよ」


 そうしてティファはハイパードライブを行使。それにユニバースイグナイターもハイパードライブアンカーで続く。

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