vsAI

 ブレイクイーグルに搭載されたAIはその動きを見て即座に照準をコクピットに合わせてエネルギーマシンガンを放ってくるが、コクピットを狙ってくるのなら話は早い。

 即座にコクピットを盾で防ぎ、エネルギーライフルを後ろ腰にマウント。


「セイバーブーメラン!!」


 そして、盾の側面にマウントされている小型ビームセイバー、セイバーブーメランを手に持ち、投げつける。

 セイバーブーメランを見てブレイクイーグルは盾で防ごうとするものの、セイバーブーメランは易易と盾を真っ二つにしてギャラクシーイグナイターの手元に戻ってくる。


「もう一投! ついでに、もう一枚!!」


 戻ってきたセイバーブーメランを再び投げ、盾にもう一枚マウントされているをセイバーブーメランも取り出し、それを投げる。

 2枚のブーメランを見てブレイクイーグルは咄嗟に迎撃を判断したらしく、AIらしい精密な射撃でセイバーブーメランを弾き飛ばす。

 しかし、セイバーブーメランは弾き飛ばされてからすぐに勢いを取り戻し、再びブレイクイーグルに迫っていく。


『なっ、あんな原始的な武器が独りでに!?』

「そりゃ当然よ。セイバーブーメランとは言ってるけど、アレの正式名称はフェンサーウィング弐式。あたしの脳波で動いてんだから」

『脳波で!? そんな武器、聞いたこともありませんわよ!』

『そりゃ、あのフェンサーウィング弐式はわたしの発明だし? 発表も何もしてないからアンタが知るわけ無いじゃん』

『なんですって!?』


 まーたお嬢様がヒステリーを起こしてるよ。

 そんな事を思いながらも、サラはセイバーブーメランこと、フェンサーウィング弐式の操作に集中する。

 流石に何度も弾き飛ばされては軌道修正をしていると、そこそこ集中しないとセイバーブーメランがあらぬ方向に飛んでいってしまうからだ。

 まぁ、それはともかくとして。


「さて、あの状況でAIさんはどうやって対処するのかしらね」


 エネルギーライフルを構え、照準を合わせる。

 並の軍人でも詰みかけているあの状況。AIはどうやって反応するのか。


「それ、ばっきゅん」


 狙いを澄ましてエネルギーライフルを撃つ。

 その一撃がブレイクイーグルにとってはもうキャパオーバーだったがためか、ブレイクイーグルのコクピットにエネルギー弾が直撃。

 実践仕様の火力のエネルギー弾を受けたブレイクイーグルはそのまま爆散した。


『なっ!? 私のブレイクイーグルが!!?』

「まっ、こんなもんよね。まだ人間の方が対応力は上。これからの進歩に期待かしら」

『それはそうね』

『ぐっ、ぬぬぬ……!! ならば、3機のブレイクイーグルで叩き潰して差し上げますわ!!』

「へぇ、3on1。学院の決闘じゃできなかった事ね。いいじゃない、かかってきなさい。こっちもセイバーブーメランは最後の最後にしか使わないようにしたげる」


 セイバーブーメランをキャッチし、盾に格納したサラは、さも多対一が当然だと言わんばかりにハンデを付ける。

 普段から複数の賊を相手に戦ってきたサラにとっては、寧ろ1on1の方が経験が少ない。

 多対一の方がやりやすいとすら思っていた。

 故に、出撃してからすぐにエネルギーライフルを放ってくる3機のブレイクイーグルを見て、手慣れた様子で変形して距離を取る。


「狙いはまずまず。けど、戦い方が一般的ね」

『くっ、そもそも何なんですの、あのネメシスは!! 小型で変形するなど、どこのマイナーメーカーのネメシスですの!!』

『はいざんねーん。あれ、わたしのお手製ネメシスよ。第5.5世代ネメシス、ギャラクシーイグナイター。その性能はあんたの敗北って形で知りなさいな』

『あなたのような平民がネメシスを……? そんな事、あり得ませんわ!!』

「その平民に生かされている貴族が何言ってんのかしらね!!」


 変形した状態でエネルギーマシンガンの弾から逃げてる中、一瞬で変形してブレーキをかけ、再度変形する事でマシンガンの弾幕の中を切り返す。

 先程までは逃げていたが、今度は接近。弾幕をバレルロールで回避しながらバックパックのミサイルハッチを開く。


「マルチロック! Fox2!!」


 バレルロールではなく、機体を回転させながらミサイルをばら撒く。それにより無作為な軌道でミサイルが3機のブレイクイーグルへと迫っていく。

 そのミサイルを確認し、危険と判断したAIは即座に対空防御を行い、ミサイルを撃墜する。


「その後隙貰ったぁ!!」


 そのミサイルを迎撃している一瞬。その隙を見逃さず、背部の二連レールキャノンの照準を一瞬で合わせ、コクピットに砲弾を叩き込む。

 いくらエネルギー弾では無いにしても、レールキャノンの火力は通常のライフルよりも圧倒的に高い。

 そんな物を受けたブレイクイーグルは爆散。宙域に漂う鉄屑となった。


『くっ、ですが、まだこちらの方が数は勝っていますわ!!』

「だったらこうしてやるわ!!」


 即座に照準をギャラクシーイグナイターに合わせるブレイクイーグル。

 通常なら突っ込むのはエネルギー弾の性質上危険だが、サラは構わず突っ込む。

 放たれるエネルギー弾は全て盾から展開したエネルギーシールドで防ぎ、イグナイターの機動力を持って敵の真横であり、もう一機の敵の射線上と被る場所へ移動。

 敵2機の動きを頭に叩き込みながらブレイクイーグルに切りかかる。


『何してますの!? 早く射線を作りなさい!!』

「作らせないようにやってんのよ! んでもって、これでもう一機!!」


 切りかかりながらも自身は必ず相手のブレイクイーグルを盾にするように動く。

 それだけでもう一機のブレイクイーグルはマシンガンを撃てなくなるため、後は近接戦を制するだけ。

 敵のセイバーをこちらのセイバーで弾き、盾を蹴り飛ばし、がら空きの胴体に背部二連レールキャノンを前面へ展開してぶち込む。

 これで残りは一機。

 こうなれば後は先程の焼き直しだ。


「一機になればコイツをどうにもできないでしょう? 行きなさい、フェンサー!!」


 盾を振ってフェンサーウィング弐式を分離。

 分離されたフェンサーウィング弐式は回転しながら残りのブレイクイーグルへと迫っていき、先ほどと全く同じ構図となる。

 後はサラが隙を見てコクピットをエネルギーライフルで撃ち抜くだけ。

 実に簡単な作業だ。


「はいおっしまーい。所詮は発展途上のAI。あたしの敵じゃないわね」

『ぐっ、ぬぬ……!! 何故あのサラ・ハインリッヒがここまでの力を……!!』

「時の運といい師匠に恵まれたからね。こちとら伊達で今日まで生き残ってきた訳じゃないのよ」


 確かにトウマやレイトのような規格外にサラは一歩劣る。

 だが、規格外を相手に一歩だけだ。

 既にサラは互いに同等の性能であるイグナイターを使った模擬戦であればトウマ相手に4割の勝ちをもぎ取れるようになっているし、レイトにも1割。

 ネメシスオンラインのランカー達と同等の勝率を叩き出している。

 彼女は間違いなく、ネメシスオンラインのランカーにも並ぶ、この世界が生み出した天才だ。

 そんな彼女が、今主流の戦い方しかできないAIに負けるわけがない。

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